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仔猫と美丈夫 (イゾウ×サッチ)

「あ~。気持ちいいなァ」 若草が敷き詰められた丘の上にごろりと寝そべったリーゼント頭が、満足そうに伸びをした。揺れない陸の上に直に寝そべって昼寝をするのも、海の上で生きる人間にとってはなかなかの贅沢ではないだろうか。潮を含まない乾いた風は、さらりと頬を撫でていく。...

リクエスト (イゾウ×サッチ)

「……ったく。野郎の一人暮らしでこんな風呂があるなんて、ボンボンってのはいい暮らしだよなァ」 大人二人が十分に足をのばして入れる湯船に浸かりながら、サッチは妬んだ。今でこそ多少ゆとりのある暮らしが出来ているが、数年前までは借金の返済に追われてゆったりと風呂にも入れなかった生...

おおかみサッチと7匹の子イゾウ (イゾウ×サッチ)

「ふんふん。ここだな」 茶色の毛並みに黒いあごひげ。頭にトレードマークのリーゼントをセットしたおおかみは、小さな小屋の前でにやりと笑いました。 「ヒヒッ。いい匂いがしてやがる。聞けばガキばかりで留守番してるらしい。腹ペコなおれにはとっておきのテーブルってわけだ」...

釣られた魚の処世術(6/6)

立て膝の間からちらちらと見えるそれは、計算し尽くされた角度でサッチの意識を捉えて離さない。独特の仕立てをしている肌着はぴたりと密着してそこを守っているが、明らかに普段とは違う形を呈していた。じわりと質量を上げていくそれから、目が離せない。そんなサッチを嘲笑うかのように、イゾ...

釣られた魚の処世術(5/6)

酔いと疲労でゾンビのような形相になりながら厨房の後片付けをする部下たちを「あとはやるから、もう寝ろ。明日は頼むぜ」と追い出し、サッチは1人黙々と片づけを始めた。大所帯の宴の後の厨房は、はっきり言ってその最中より修羅場だ。だが何も考えたくない今は、山積みになった皿をひたすら洗...

釣られた魚の処世術(4/6)

「この酔っ払いが! ほら、入れ」 いささか乱暴にイゾウを彼の部屋へ押し込む。彼はそのままベッドにごろりと転がり、はだけた胸元も気にせずくっくと笑っている。襟元から覗くのはどうみても男性の胸筋なので別に隠す必要はないのだが、それでもやっぱり、刺激的な絵ではある。...

釣られた魚の処世術(3/6)

部下に囲まれ大口を開けて笑うイゾウを少し離れたところでチラ見しながら、サッチは酒を煽った。出来れば今日は久しぶりに彼と膝を突き合わせて飲みたかった。彼の真意を聞きたかったのだ。  イゾウが「飽きた」のならばそれでいい。また「家族」に戻ればいいだけの話なのだから。だが、何とな...

釣られた魚の処世術(2/6)

帰還の宴は、ニューゲートの指示以上に盛大に行われた。皆が家族の無事の帰還と成功、そして功労者の生誕を祝い、戦利品を羨み、共に笑い、飲んだ。2か月という長い遠征期間が彼らのメンタルを削ったことは否めない。だが無事に帰り、偉大な父に労われることで、彼らはその苦労すらも宴の賑わい...

釣られた魚の処世術(1/6)

「なァ、イゾウってオナニーとかするのかな?」 いくら酒の席とはいえあまりに衝撃的な末っ子の疑問に、年のいった海賊たちは酒を飲む手を止めた。 「エースくん? いくら本人がいないっつっても、ちょーっと直接的すぎるんじゃないかな?」...

サッチ太郎 (イゾウ×サッチ)

むかしむかしあるところに、白ひげと呼ばれる大男が住んでいました。ある日、白ひげが山へ芝刈りに行くと、草やぶの中に一本のフランスパンが刺さっていました。 「これは面白い。持って帰って食べるとしよう」 持ち帰った白ひげが大ナタでフランスパンを切ると、中から玉のような赤ちゃんが出...

恋とはどんなものかしら (マルコ×エース/イゾウ×サッチ)

「おいエース! てめぇ、尻揉ませろ!」 「はぁっ!? 意味わかんねぇ!」 衝撃的な情景を見て貴重な食事を落とした上に、何でそんなことまで言われなければいけないのか。完全にもらい事故状態の新入りは、仮にも目上の隊長に対して思ったままを口にした。素直に「はいそうですか」と受け入...

ちいさな贈り物 (マルコ×エース)

「何やら騒がしいねい」 イゾウは「暦の上では春だ」と主張するが、冬島のど真ん中にいるモビーにとっては完全に冬の気候の夜。それでも男たちは暖を取りながら甲板で好きに飲んでいた。その間を縫うように、末っ子が何やらせわしなく動いている。どうやら各隊の隊長に何かを渡しているようで、...

マッチ売りのサッチ (イゾウ×サッチ)

「マッチ、マッチいかがですか」 ただ冷たいだけの風はやがて雪を呼び、地面がうっすらと白く染まった大みそかの夜のことでした。この季節にはそぐわない薄い服を来た一人のおっさんがマッチを売っています。靴はすりきれてボロボロで、雪が降るほど寒いのに、コックコートの上には上着の一枚も...

揉み方三年 切り方三月 (イゾウ×サッチ)

「お。イゾウちゃんみっけ」 うららかな昼下がり。イゾウが気に入りの場所であるメインマストの下に積まれた木箱の上でキセルを燻らせていると、眼下の甲板からにょきりとフランスパンが生え、そのままひらりと飛び乗ってきた。 「んだよ」 「お、ご機嫌斜めだな」...

待ち人、きたる

「あいつら、相変わらず容赦なく食いやがるなァ」 しん、と静まり返ったラウンジに、洗い物の音だけが響く。  「ま、作りがいがあるってもんだ。コック冥利に尽きるぜ」 サンジの誕生日パーティーが終わり、サニー号のラウンジには主役のサンジと見張りのゾロの2人だけが残っていた。...

間男ノススメ

「ここの船は賑やかだな」 ルフィに洗濯物の取り込みを手伝わせて失敗しているクソコックを傍目に昼寝をしていると、横に通りすがりのエースがやってきた。  「通りすがり」というのは比喩でもなんでもなく、本当にメリーの前を通りがかったので船尾にに小船をつけて上がってきたのだ。...

間男ノススメ 2

「何か1杯貰えるかな?」 メリーのキッチンに気配なく届いた声に、サンジは少なからず驚いた。 「エース!?」 おやつが終わって一息ついたクルーは、めいめい好きなことをして過ごしている。  いくらエースが気配を消しても、ストライカーで接近して乗り込まれるのだから、誰かしら気付く...

青春の輝き(3)

「一本!勝負あり!!」 高らかにゾロの勝利が告げられ、大歓声が巻き起こるその光景を、サンジはどこか遠いところで眺めている錯覚に陥った。自分だってその場にいるのに、どこかに取り残されているような、そんな感覚だった。   見事大会3連覇を成し遂げたゾロの表情も、さすがに歓喜に満...

青春の輝き(2)

その光景は、いくつかの偶然が重なって見えたものだった。 明日からインターハイが始まる。ゾロの集中力が徐々に高められていくのが手に取るように分かる。  試合前に頑張れよの一言だけでも話が出来たら。そう、邪魔にならない程度に。...

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