間男ノススメ 2
- 丘咲りうら
- 2018年1月30日
- 読了時間: 6分
「何か1杯貰えるかな?」
メリーのキッチンに気配なく届いた声に、サンジは少なからず驚いた。
「エース!?」
おやつが終わって一息ついたクルーは、めいめい好きなことをして過ごしている。
いくらエースが気配を消しても、ストライカーで接近して乗り込まれるのだから、誰かしら気付くと思うのだが。
「サンちゃんに逢いたくて、気配消してきちゃった」
敵だったらどうするんだと思いながらも、屈託のないエースの顔を見ているとまぁいいかと思ってしまう。
この笑顔には、何故かほだされてしまう不思議な魅力がある。
「…いいぜ。腹減ってねェか?」
「ん~…あんまり…だけど、ちょっとだけ何かつまめるもの、ある?」
ルフィ同様、万年欠食児童のようなエースらしからぬ発言に、サンジは「ん?」と小首をかしげた。
変だなと思いながらも、先ほどおやつに出したミートパイを2切れとコーヒーをサーブした。
いつもなら真っ先に手を伸ばすおやつには手をつけず、静かにコーヒーをすするエースを見て、サンジはやっぱり何かが違うと感じ、思い切って声を掛けてみた。
「なぁ、エース。その…おれの勘違いなら悪ィけど、何かあったのか?」
伏せていた目をちらりとあげ、エースは寂しそうに笑った。
ずきりと胸が痛むような、そんな笑みだった。
「あぁ…ちょっとね。…もうおれの人生もここまでかなぁ」
あの白ひげ海賊団の2番隊隊長がそこまで弱気になることとは、一体何事なのか。
エースはルフィの兄だ。その兄が落ち込んでいる。
サンジはどうにかしてやりたかった。
「力になれるか分からないけど、話聞くぐらいは出来るぜ?」
サンジがそういうや否やエースは立ち上がり、ガバっとサンジに抱きついた。
「サンちゃーん!おれEDになっちゃった!」
ED――――男性の性機能障害の略称だ。
うちの女性陣が聞いたら鼻で笑う話題だろうが、サンジとしては人事ではない。
自分と大して変わらない年齢でナニが勃たたなくなってしまうなんて、考えただけでも身震いがする。
女性とのメイクラブは大層いいものだと聞くので、今後の人生を悲観してしまうのもムリはないだろう。
例えその「経験」が自分になかったとしても、サンジは同じ男として同情を禁じえなかった。
「うちの船医に診てもらうか?」
エースは弱弱しく首を振った。
「白ひげ海賊団の船医が診てダメだったんだ。ここの医者が優秀なのは知ってるが、もしこれで治っちまったら、うちの船医の立場がない」
それは確かにそうだ。
「心あたりとかあるか?ストレスかかってるとか」
自分が聞いてどうなるものでもないだろうが、サンジは何とかしてやりたいと思った。
「最近忙しかったからなぁ。黒ひげのやつは寸でのところで逃しちまうし」
「ちゃんと休んでるか?疲れすぎるとダメらしいぞ」
あくまでも雑誌情報だが。
「睡眠は取ってるけど、ちゃんと休めてないのかなぁ」
チラっと思わせぶりな視線を投げかけたが、サンジは気がついていない。
「…サンちゃんに抱きついてたら治るかも」
すごい思いつきのように言われてしまった。
「さっきのはものの弾みで抱きついちゃったけどさ、何ていうかすごく安心できたんだよ」
にっこり笑うエースに、サンジは少しむっとした。
「おれァレディじゃねぇぞ?」
女代わりにされると思うと、少しイヤだ。
「知ってるよ。華奢だけど内面はすごく男らしいところも。そういうとこ、おれ好きだよ?」
さらりと好きと言われてしまい、どういう意味の「好き」なのか真意を測りかねる。
その逡巡を見透かしているかのように、エースは続けた。
「恋愛にとって性別の垣根なんて低いものさ。そのキモチがホンモノなら、野郎でも野郎にホレることって、あるよ?」
当たり前のように言われ、あ、やっぱりそうなのかなと少し思ってしまった。
「でも今はそんなセクシャルな意味じゃなくてさ、甘えたいってのかなァ。エネルギーを充填したいの」
だから、ね?お願い、とおねだりされてしまい、サンジは結局承諾してしまった。
「あ~~~~~。癒されるぅ~~~」
ベンチに座ったエースに跨る形で座らされ、まるで子どものように抱きしめられた。
サンジは自分の手のやり場に困ったが、このまま突っ張っていても拒否しているようで何だかなと思い、とりあえずエースにぺたんと身体を預けて腰に手を回してみた。
大きいネコ、というよりはトラに懐かれている感じで、悪い気はしない。
「ど、どうだ?」
「ん~。もう一息なんだけどなァ」
もぞもぞと収まりのいい場所を探しながら、エースが答える。
こんな格好を誰かに見られたりしたら、何と言い訳すればいいのか。
サンジは気が気でなかったが、困っているエースを無碍にするのも悪いし、結局されるがままになっていた。
「…ね?キスしてもいい?」
しばらくたった頃、エースからとんでもない提案をされた。
「へっ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまったが、エースは気にせず顔を近づけてくる。
「サンちゃんの唇、美味しそう」
甘い声で囁く瞳の中に炎が揺らめいた、気がした。
徐々に近づいてくる唇に、サンジはうろたえた。
いいのか?これは本当にいいのかとぐるぐると考えながらも、エースの顔から目が離せなかった。
と、その時、ラウンジの扉がものすごい音を立てて開いた。
壁に当たった反動で、上の蝶番がぼろりと取れた。
「…ナニやってやがんだ、このクソ兄貴!」
ものすごい殺気を纏わせながらキッチンに入ってきたのはゾロだった。
「エース!サンジはおれのもんだぞ!」
「うるせェルフィ!てめェは黙ってろ!」
後ろから続けて入ってきたルフィを、何故かゾロが声を荒げてけん制する。
「あ~あ。もうバレちゃった」
ちぇっと、子どもみたいに唇を尖らせサンジをひょいと下ろす姿には、先ほどの色気は見当たらなかった。
「黙って聞いてりゃ何がEDだこのクソ兄貴!てめェの股間のブツは何だ!」
ゾロの怒号につられて目をやると、エースのそこは目のやり場に困るぐらい隆々とそびえ立っていた。
あまりの立派さに、サンジは思わず赤面してしまった。
「あ、ホントだ~。治ったね」
白々しく喜ぶエースに、ゾロの手が刀に伸びた。
「サンちゃんのおかげだよ。ありがとう」
エースはゆっくりと立ち上がり、サンジの顎に手を添えて上を向かせると、かぷりとその口に食いつき、ちゅるりと舌を這わせた。
「…っ!」
「ごちそうさま。次はちゃんと口説きに来るね」
甘く囁いたその瞳には、先ほどの炎が映っていた。
エースはものすごい形相で抜刀しているゾロの懐をすり抜け、すれ違いざまにゾロのピアスをしゃらんと撫でながら囁いた。
「いいのかな?おれ、貰っちゃうよ?」
「エース!そのパイおれのだぞ!」
「てめェはさっきホールで2枚食っただろうがこのクソゴム!!」
ルフィの空気を読めない発言にすかさずサンジの突っ込みが入り、ゾロは見事に答えそびれた。
そんなことをしている間に、エースは出されたパイを両手にひらひらとさせながらルフィを連れて外へ出て行ってしまった。
「…あいつ、絶対ェ斬る」
切る相手がいないのに抜刀しているという間抜けな姿になりながらも、ロロノア・ゾロは決意を新たにした。
(おわり)
-------------------------- エースをEDにしてみました(ひでェ) でもお分かりの通り、エースのはアレです。アレ。 兄ちゃん悪いなー!
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