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うろんな絵本
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恋は砂糖菓子のように(マルコ×エース)
暑くもなく寒くもない、穏やかな日差しが降りそそぐうららかな午後。絶好の昼寝日和の甲板に響く若い声に、海鳥達が呼応する。夜の宴とは違う賑やかさが席巻するモビーディック号に、マルコは些か座りの悪さを感じていた。尊敬する父が船長を務める偉大な船にそんな感情を抱く理由は、甲板を賑わ...
丘咲りうら
2018年11月17日読了時間: 9分
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愛をこめて花束を(マルコ×エース)
ふらりと現れた客は、見事にエースの心を打ち抜いた。仕事を始めてからは、毎日が楽しくて恋人を作る気にもなれずフリーだが、学生時代からカノジョに困ることはなかった。今はレンアイよりも仕事。そう思っていたのに。 「ああ、マルコか? おれの馴染みの客だ。隣の駅で税理士だか弁理士だか...
丘咲りうら
2018年8月24日読了時間: 7分
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ひと雫の雨(エース×マルコ)
「だから観葉植物は嫌いなんだ」 マルコは呻いた。 「水をやらなくても、世話をしなくても、ちっとも枯れやしない。さっさと諦めればいいのに、戯れに降ってくる一滴の水であっという間に息を吹き返す。何で死なない。何で、何で」 震える声で頭を抱える年かさの男に、エースは穏やかに声を掛...
丘咲りうら
2018年8月24日読了時間: 4分
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太陽へのオマージュ(15/15)
「ニヤケ面のパイナップルってのも、なかなかにキモチワリィな」 幼馴染のイヤミもどこ吹く風と、マルコは聞き流した。サッチはそう言うが、傍目にはマルコの表情は一切ニヤけてなどいない。長年の付き合いが見せる幻影だ。 2人で心ゆくまで過ごした(主にベッドの中だったが)週末が開け、『...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 3分
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太陽へのオマージュ(14/15)
……まいったねい。 全く動く様子のない塊に、マルコは嘆息した。 何度も絶頂を極めて倒れこんできた身体を満足気に抱きしめ、その身体を丁寧に清めて横たえ、肌かけを掛けてやった途端、くるりとそのままくるまってしまい、ぴくりとも動かなくなった。...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 4分
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太陽へのオマージュ(13/15)
さて、どうしたものかとマルコは思案した。 嫌がっているわけではないのだろうが、どこに触れてもエースは頑なに快楽をあらわそうとせず、必死に声を押し殺していた。これはこれで初々しくていいが、こちらとしては、酒の勢いもあったであろう前回の素直な彼ももう一度見たい。しかし、エースの...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 6分
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太陽へのオマージュ(12/15)
穏やかで確かめるようなキスが、徐々に深くなる。 ぬろりと入ってきた舌はエースの口腔を蹂躙し、余すところなく触れた。 上あごをなぞられ、ぞくりと身体が震える。歯茎を舐められ、そんなところが感じるのかと慄いた。 「ずいぶんといいタイミングで登場したもんだねい」...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 5分
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太陽へのオマージュ(11/15)
ただ待つだけの日々がこんなに辛いものだとは、マルコは知らなかった。 「おーおー。今日もパイナップルが元気にしおれてやがる」 そんな幼馴染のからかいにも反応出来ない。 あれから1週間が経った。マルコは仕事の合間を見て『グラディート』に日参しているが、そこにエースの姿はなかっ...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 7分
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太陽へのオマージュ(10/15)
連れてこられたのは、駅前の一等地に店舗を構える超高級焼肉店だった。もちろんその店の存在は知っていたが、とてもじゃないが自分たちには縁がないと毎日素通りしていた。 「マ、マルコ。おれが言うのも何だけど、ルフィってマルコが思ってる以上にすげェ食うんだ。この辺の食べ放題とか全部入...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 4分
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太陽へのオマージュ(9/15)
マルコはエースの家に行ったことがなかった。エースは招かなかったし、マルコも興味はなかった。この数ヶ月、毎日のように顔を突き合わせていたのに、マルコはエースのことを大して知らない。好きなものも、嫌いなものも、エースが本当はどんなことを考えているのかも。...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 8分
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太陽へのオマージュ(8/15)
来ない、来ない、来ない。 マルコが『グラディート』に来なくなり、3週間が経とうとしている。エースはその間もバイトに入っていたが、サッチの目には明らかに意気消沈しているエースが映っていた。 「……今日も来なかったな」 客もまばらになり、カウンターでグラスを拭きあげながらエ...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 6分
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太陽へのオマージュ(7/15)
来ない、来ない、来ない。 マルコが『グラディート』に来なくなり、3週間が経とうとしている。エースはその間もバイトに入っていたが、サッチの目には明らかに意気消沈しているエースが映っていた。 「……今日も来なかったな」 客もまばらになり、カウンターでグラスを拭きあげながらエ...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 6分
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太陽へのオマージュ(6/15)
新学期に入りエースのシフトが通常に戻ると、マルコと顔を合わせる機会も減った。 決意どおり、エースは『グラディート』ではひたすら明るく振舞った。軽口を叩き、小突かれ、けらけらと笑う。たまにマルコの家に行き、自分を見失わない程度に酒を飲み、じゃぁと帰宅する。上っ面だけの付き合...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 4分
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太陽へのオマージュ(5/15)
「……おまえ、エースに何したんだ?」 定位置で平然とした顔で食事をするマルコに、サッチはたまらず尋ねた。 夏休みなのでオープンから入ってもらっているエースの様子が、今日は朝から明らかにおかしい。どこか上の空で、チラチラとドアを盗み見ては小さく溜息をつき、いざ目当ての人物が...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 4分
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太陽へのオマージュ(4/15)
……やっちまったよい。 後悔と自責の念が渦巻くとは、まさに今の状況のことだ。 ポーカーフェイスでタバコに火をつけた。シーツに包まった横の塊がもぞりと動き、ふぅとため息をついた。 「どうだい」 何の気なしに聞いた。感想を聞くのは礼儀だろう。...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 5分
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太陽へのオマージュ(3/15)
この出来事を境に、二人の距離はますます縮まった。コンサルト業をしているだけあって経営学もそれなりの(本人談であって、エースからすれば教授並だ)知識量があるマルコに、エースは講義で疑問に思ったことを質問するようになり、その延長線上で時折マルコの家を訪れるようになった。名目上は...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 5分
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太陽へのオマージュ(2/15)
エースは『グラディート』の近くにある大学の学生だ。まだ教育課程もあるので、アルバイトに入れる日は限られている。 平日は火曜日と木曜日だけで17時から22時まで。土曜日は11時のオープンからクローズの24時ごろまで終日入り、日曜日は11時から22時まで。...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 6分
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太陽へのオマージュ(1/15)
「それが気に入ったのかい?」 カウンター後ろの壁面収納に設置したばかりのオブジェに穴を開けんばかりに見つめる青年に、マルコは声を掛けた。 「……うん。すげェカッコイイ。一斉に飛び立ってさ。こいつらどこ行くんだろうな」 青年は、振り返りもせずそう答えた。...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 5分
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海の男たちの歌
夜明けだ。 静かに波打つ闇の中でその気配を感じた。ほどなくして地平線がうっすらと光り、やがてきらきらと輝きを放ち始めた。光の粒を纏った太陽が厳かに浮かび上がる。海と太陽。何者も敵わない両者が日に2度だけ交わるその瞬間を、敵船の甲板で見るのはもう何度目だろう。...
丘咲りうら
2018年6月12日読了時間: 9分
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彩りの空
「でっけぇ月だなァ」 ぽかーんと口を開けて空を眺めるエースに、マルコは苦笑した。 「口開けて待ってても、月は落ちてこねェよい」 「……!いくらおれでも月まで食わねェよ!」 エースの抗議をハイハイと流しながら、マルコも天を仰いだ。...
丘咲りうら
2018年5月12日読了時間: 4分
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