青春の輝き(2)
- 丘咲りうら
- 2018年1月30日
- 読了時間: 2分
その光景は、いくつかの偶然が重なって見えたものだった。
明日からインターハイが始まる。ゾロの集中力が徐々に高められていくのが手に取るように分かる。
試合前に頑張れよの一言だけでも話が出来たら。そう、邪魔にならない程度に。
そう思い、さすがに帰宅しているであろう時間にゾロの家の角を曲がろうとした時、それは目に飛び込んできた。
「好き……すごく好きなんです……」
ゾロの目の前に立ち、たしぎは泣いていた。
涙に濡れたその瞳は、明らかに恋をしているそれだった。
気がつけば、サンジは踵を返して歩き出していた。
……だよな。うん、そうだ。
こういうときって、頭を何かで殴られたような、とか、心臓がつぶされそうな、とか、そういう感情があるのかと思ってたけど、そんな感情は何も浮かばなかった。
自分の中だけが妙に冷静な気がして、そんな自分がおかしくて、口元が自然と弧を描いた。
あいつ、女の子が目の前で泣いてるんだから、肩ぐらい抱いてやれよな。ホント不器用なヤツ。
淡々と歩を進めながら、サンジの思考は深くなっていく。
やっぱ、ゾロは女の子と付き合った方がいいんじゃねェかな。
たしぎちゃんとお似合いだもんなぁ。
実際触れた唇は、思っていたのと違っていたのかもしれない。
ゾロよりは細いが、こっちだって生物学的にはちゃんと男なのだ。
そりゃぁ、女の子はふわふわしてていい匂いがして、どこもかしこも柔らかくて素敵だろう。高校生最後の夏だ。こんなむさ苦しい男よりも、女の子の方がいいに決まってる。
きっと、ゾロはランナーズハイで道を誤っただけだったのだ。
このまま何事もなかったようにダチに戻ればいい。
今ならまだ戻れる。
どこかすっきりした表情とは裏腹に、胸には冷たい鉛玉を入れられたような、そんな息苦しさを感じながらサンジは家路を急いだ。
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