ハリケーン・ラプソディ(2/3)
見張り台の中で、エースは膝を抱えて座っていた。考え事をするには、ジョリーロジャーがはためく一番高いこの場所がうってつけだ。 「セックスがあんなにイイものだったなんて、知るわけねェじゃん」 井の中の蛙、という言葉を知ったのは、この船に乗ってからだ。イゾウの国に伝わる言葉らしい...
見張り台の中で、エースは膝を抱えて座っていた。考え事をするには、ジョリーロジャーがはためく一番高いこの場所がうってつけだ。 「セックスがあんなにイイものだったなんて、知るわけねェじゃん」 井の中の蛙、という言葉を知ったのは、この船に乗ってからだ。イゾウの国に伝わる言葉らしい...
「おれ、しばらくマルコとセックスするのやめる」 突然宣言をした末っ子に、マルコは眠たそうな目を向け「あ?」と聞き返した。 「飽きたのかい?」 「違う。逆だ。おれマルコとセックスばっかりしてたらダメになる気がしてきた」 エースの自覚はもっともだろう。エースとマルコは恋人同士と...
決して広いとは言えないシャワールームの、それも二枚のパーティションだけでしか仕切られていない空間に、明らかにシャワーの音ではない水音が響く。自分の股間から聞こえるそれは、足の間で揺れる黒い長髪の持ち主が奏でている。まるで美食の粋を頬張るような仕草に、サッチはため息をついた。...
冬眠したい丘咲です。 いや、冬眠とまでは言わない。家から出たくない。 それ本当にやったら、私の場合は正真正銘のクズになるんですけどね。 さて、明日は東京でGLCが開催されますね。 今回、ミホミホさん(@danbat_miho)に、「シジフォスの岩」を委託して頂くことになりま...
正直なところ、エースにはマルコが何を言っているのか理解できていなかった。分かるのは、自分に対する罵倒だけだ。いつだってマルコは明確な答えは口にせず、自分で探せと言わんばかりに口を閉ざしてしまう。だからエースは、今も彼が何かの答えを導くのではと真っ直ぐマルコを見つめた。...
「エースから離れろい」 見たことがない表情で、マルコがシャンクスを睨みつけている。喜怒哀楽をあまり出さない上に「怒」の部分は内に特に秘めるタイプのマルコの剣幕に、エースはまるで自分がその対象になっている気がして大層ビビった。...
ベッドに転がって笑い死にするかもしれない天下の四皇を、エースは呆然と見ていた。かれこれ5分は笑い続けている。自分が知らないだけで、シャンクスは何か妙な持病を持っているのだろうかと考え始めたところで、シャンクスがヒーヒーと苦しそうに息を整え、起き上がった。...
「やっと終わったよい」 エースを見送った流れでそのまま飲んでいるイゾウとサッチの元に、仕事を終えたマルコ(『休暇』という意味を、このワーカーホリックは理解しようとしない)がやってきたのは、もう酒場ぐらいしか開いていない時間だった。酒を飲ませる店など星の数ほどあるというのに、...
「おれと付き合って、何がしたいんだよい」 ある日、しつこく付きまとう末っ子に長男が面と向かって問うた。 「何って……恋人になりたいんだ。マルコと」 若さゆえのまっすぐさを、兄は嗤った。 「おまえ、女とセックスしたことはあるのかい?」 「まぁ、……ないことはないけど」...
焦りと苛立ちは募るばかりだ。あてもなく探し回っているが、この広い街での人探しは困難を極める。こんなことをしている間に、マルコとシャンクスは会っているかもしれない。 早く! 早く! 気が急いて一瞬周りが見えなくなったエースの身体に誰かがぶつかった。 「……っと、悪ィ」...
「そっかァ。フラれちまったか」 気の毒になァと決めつけるリーゼントに、エースは飯を掻き込みながら「まだ終わってねェよ!!」と噛みついた。当たり前のように2人の間に座らされ、バキュームのごとく食事を摂る姿を観察される。気分は檻の中のライオンだ。...
いつから、なんて覚えてない。多分、あの青い炎を見たその瞬間から「欲しく」なった。いくつもの島を渡り、海を越え、がむしゃらにその背を追った。だがようやく振り向いた青い瞳は、冷たい色をしていた。 「答えは出たかい」 甘いマルコの声は、こんな時はより残酷に響く。 「うん……」...
気高い不死鳥は耐えていた。 「天下の白ひげ海賊団の一番隊隊長サマとは思えない姿だな」 十分に侮辱に値する投げかけだったが、反論する気力がなかった。それどころか、理性を保っているのがギリギリの状態だ。気を抜けばたちまち人型を保てなくなってしまう。...
「いたいた、イゾウちゃーん」 背後から投げつけられた気持ちの悪い猫なで声にモビー随一の伊達男は不機嫌を隠すことなく眉をしかめた。こんなふざけた呼び方をする人間は、モビー広しといえど1人しかいない。そこには予想通り、リーゼントがトレードマークの4番隊隊長が手招きをしていた。...
むかしむかしあるところに、サッチという男が住んでいました。男一人で小さな小屋に住み、暮らしは大層貧しいものでしたが、心優しい彼はそれなりに楽しく暮らしておりました。 ある日、サッチは田んぼの真ん中で罠に掛かった鶴を見つけました。苦しそうに羽を広げるその姿に心を痛め、急いで...
「ふふ~ん。んっふふ~ん」 夜の船室に上機嫌な鼻歌が流れる。隊長権限で与えられた個室で、何かとお騒がせな4番隊隊長が簡素な引き出しの中をのぞき込んでいた。 海賊なんて当たればそれなりにいい暮らしは出来るが、いつ海の藻屑になってもおかしくない生活だ。サッチは陸でまじめに働い...