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執筆者の写真丘咲りうら

太陽へのオマージュ(13/15)

さて、どうしたものかとマルコは思案した。

 嫌がっているわけではないのだろうが、どこに触れてもエースは頑なに快楽をあらわそうとせず、必死に声を押し殺していた。これはこれで初々しくていいが、こちらとしては、酒の勢いもあったであろう前回の素直な彼ももう一度見たい。しかし、エースの中の何かがそれを拒んでいるらしい。

「声出せよい。気持ちいいのは悪いことじゃねェ」

 わざと音を立て、若い砲身を吸い上げた。びくんと腰が揺れる。 「……って、そと、聞こえ……っ」  手で自分の口元を押さえ必死に声抑えているが、腰は更なる刺激を求めて前後に揺れていた。このギャップがたまらない。 「そんな安普請を買った憶えはねェよい。それに、前はいい声を聞かせてくれたじゃねェか」 「……っ。あ、れ……は、酔ってたから」 「そうだねい。あん時は力も抜けてて可愛かったよい。何なら酒でも飲ませてやろうかい?」  ぶんぶんと首を振るエースに、マルコはまいったねいと苦笑した。

「やれやれ。女とやる時もこうかい? サッチから聞いたよい。『グラディート』でバイトをする前は、随分とお盛んだったらしいじゃねェか」 「ば……っ!! た、立場が違うだろ!」  首まで真っ赤にして抗議したエースに、マルコはイニシアティブを取った手ごたえを感じた。

「あれから、女は抱いたかい?」 「……っ、知らねェ」 「そうかい」  楽しそうに笑ってやると、全く力のない瞳がマルコを睨んだ。 「マルコは、どうなんだよ」 「さぁねい」  同じようにはぐらかし、足を左右に開いて立てさせた。若いペニスの奥にひそやかに息づく蕾に、中指に絡ませた先走りを塗りこめる。

「……ひっ、ぅ」 「ここ、自分で触ったりしたかい?」  淵をなぞるな動きに、エースの膝がかくかくと震えた。 「ンなこと……するわけねェ……っ」 「だろうねい。まるでバージンだ」  クツクツと意地悪く笑い、しかし慎重に中指を第一関節まで入れると、その刺激にエースが声もなくのけぞった。侵入者を拒むように、括約筋がマルコの指を押し出そうとする。

「憶えてるかい?指を入れたら気持ち良さそうに腰を揺らして、初めてだってのに、根元までおれのを素直に飲み込みやがった」 「も……も、やめ……」 「忘れろと言われても忘れられなかったよい。あれから何度も思い出してなァ。たまらなかった」  太ももの内側に唇を落とし、きつく吸い上げる。前は付けなかった所有の印がそこに咲いた。緊張が緩んだ一瞬をついて、中指を根元まで埋め込んだ。 「……ぁ……あ、あ……」  刺激を欲しがるように、足が空をもどかしげに蹴った。以前見つけたそのポイントを指で優しく擦ると、エースの若いペニスは白濁の混じった先走りをぴゅくりと零した。  ここまで感じ入っているのに、エースにはまだためらいがある。ではこれはどうだと、甘い声で囁いた。

「セカンドバージンって知ってるかい?」

 正しい意味は知らないだろうが、エースだって健全なハタチの若者だ。友人との猥談で一度くらいは話題に出たことがあるだろう。そして、それが今の自分に当てはまることも理解しているはずだ。

「……っ!! おっさん……!」  予想は的中したようだ。エースの頬はこれ以上ないほど朱に染まり、アナルはマルコの指を締め付けた。先ほどまで拒んでいたそこは、いつの間にか中へ中へとマルコの指を誘い込む動きへと変わっていた。乾いた唇を舐めて湿らせると、マルコは指の動きを早めた。

「……っあ! ……あぁ……っ、ふぁ! あ……ん!!」 「気持ちいいかい?」  エースのペニスに手を添え、ゆるく扱きながら尋ねた。限界が近いらしいそれは、マルコの声に応えるようにふるりと震えた。

「……っ、きも、ちい……っ、あ、で、出る……ァ……っ!!」

 耐え切れず吐精するペニスを、マルコは根元から搾り出すように扱いた。びくびくと跳ねる腰骨に、甘く歯を立ててやる。

「ごめ……っ、汚れ、た」

 ようやく快感に素直になったエースにマルコは安堵し、もう遠慮はいらないと手にしていたジェルを足して指を増やし、やや強引に突き入れた。

「何言ってんだ。まだ序の口だろい」  脱力したエースのアナルは抵抗することなくジェルを纏った指をすんなりと飲み込み、貪欲に食んだ。

「ひ……んっ、あ、あ、……んぁ」 「イイ声だ。もっと聞かせろい」 「ゃ……っ! あ、あ、ァ……っ」  だらしなく開きっぱなしになった唇から零れる唾液を舐めとり、すする。我ながらおっさんくさいと思うが、たまらなかった。

 3本の指でじっくりとほぐし、ジェルとエースが放った精液とでてらてらと光る指を引き抜いた。ゴムを取り出しすばやく準備をすると、エースの膝を抱えて乗り上げ、物欲しげにひくつくアナルに己の切っ先を当てた。エースの表情にわずかな怯えが見えた。経験がないときよりも、なまじ経験があるほうが構えてしまうのは仕方がない。

「怖いかい?」 「……冗談」 「上等だ」  少し強張った膝の裏に口付け、マルコはエースの力が抜けるのを辛抱強く待った。自身の限界も近くギリギリの状態だが、無理はさせたくない。

 わずかに頷いたエースの肩口に唇を落とし、尻を開いて埋め込んだ。十分にほぐれたそこは、たやすくマルコの亀頭を飲み込み、受け入れる。

「あ、あ、はい……って」 「ああ、入れてるよい」

 実況しながら腰を進める。ゆっくりと、しかし確実に最奥を犯した。  マルコの下生えがエースの尻に密着した。はふ、はふ、とエースが必死に息を整えている。

「いいこだ。楽にしてろい」

 甘い締め付けに耐え、汗でびっしょりと額に張り付いた黒髪を撫で、ありったけの愛しさをこめて額にくちづけた。

 以前は後背位だったのでエースの表情は見えなかった。慣れないエースには正常位はまだ辛い体勢だが、マルコはエースの全てを余すことなく目にしたかった。しばらくすると上からの圧迫感に慣れたエースが深く息を吐いた。と思ったら、そのままひくっとしゃくりあげ、ボロボロと涙を零し始めた。

「エース? 痛いかい?」  さすがに面食らったマルコが尋ねる。その少し慌てた様子がおかしかったようで、エースは泣きながら笑った。

「ちが……、なんか、へんだ。痛いとか、苦しいとかじゃなくて……涙が出てく……る」  涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、それでも笑おうとするエースを、マルコは黙って抱きしめた。

「おれの前ではいくらでも泣けばいい。おまえの泣き顔を見られるのは、おれだけの特権だよい」

 途端にエースのアナルがきゅぅとマルコの怒張を締め付けた。 「すげ……独占欲強すぎ」 「言ったろい。手放す気なんざねェって。こっちはとっくに限界越えてんだ。痛くねェなら動くぞ」

 言葉は乱雑だがとびきり丁寧な動きで律動し、マルコ、マルコ、と以前は一度も聞くことがなかったその呼びかけに応えた。出来ることならば、これから彼の流す涙が悲しさや寂しさではなく、喜びや懇願の啜り泣きであることを願いながら。  

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