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初穂の香

「イゾウ!誕生日おめでとう!!」 日付が変わると同時に、ノックの返事を待たずにバターンとドアを開けた可愛い末っ子に、イゾウの頬は自然と緩んだ。 「おう、ありがとなエース」 一目散に飛び込んできた癖のある黒髪をくしゃくしゃと撫でてやると、エースはくすぐったそうに首をすくめ、へ...

彩りの空

「でっけぇ月だなァ」 ぽかーんと口を開けて空を眺めるエースに、マルコは苦笑した。 「口開けて待ってても、月は落ちてこねェよい」 「……!いくらおれでも月まで食わねェよ!」  エースの抗議をハイハイと流しながら、マルコも天を仰いだ。...

超GLC2018 ありがとうございました

顔がガッサガサの丘咲です。 イベントに向けてぷるつやにしたはずなのに、人生最大級に粉ふいてたな…orz さて、無事に超GLCを終えることが出来ました。 スペースにお立ち寄り頂いたお声掛け頂いた方、拙本を手に取って頂いた方、構ってくださった方、本当にありがとうございました。...

イゾウ・シェアリング【後編】

サッチは、最初からイゾウと積極的に付き合おうと思っていたわけではない。アプローチはこの美しい男からで、「あんたに惚れた。抱きたいと思ってる」と直球にもほどがある口説き文句でサッチに迫った。同じ男で寝食を共にする家族であり、隊長として背中を預ける彼と恋仲になることで、今まで保...

イゾウ・シェアリング【前編】

海賊のくせに惰眠を貪るという贅沢を味わえるのは、乗っているのが千五百人をゆうに超える大所帯かつ組織運営がきちんとなされているからに他ならない。人数が増えれば増えるほど統括が難しくなるのは、どこの世界でも同じだ。白ひげ海賊団は、偉大な父の統率力と優秀な息子たちがその均衡を保っ...

ZSオンリー「双璧」 ありがとうございました!

明日もマスク決定の丘咲です。 またアフターでアヒージョをキメました…。すいません…。 さて。今日は大阪で開催されたZSオンリー「双璧」にモブ売り子として参加させていただきました。 モブの分際で新刊を置くスペースまで作って頂き、こっそりと置かせてもらいました。...

何度でも大空の下で

インフルエンザカウントダウンの丘咲です。 長男がA型を発症しまして、次男は元気だけど学級閉鎖です。 発症した長男はイナビルをキメたのでめっちゃ元気で、次男も今のところ元気で、 単に家にうるさい男子が2人居るという地獄のような週末です。 さて、次は誰だ…?...

ハリケーン・ラプソディ(3/3)

「あの~……エースくん?」 ものすごい目つきで睨んでくる末っ子に、サッチは困惑した。外はハリケーンの真っ最中でやることもない。そろそろ寝るかと支度をしている時にドアを破る勢いでノックをされ、すわ敵襲かと急いで開けたら覇王色の覇気を丸出しにしたエースが立っていた。ベッドに辿り...

ゾンビ男の悲劇

「よし。完璧だ」 4番隊隊長が眺める鏡の中には全身に包帯を巻いたゾンビが1人。もちろんトレードマークのリーゼントはバッチリ決まっている。 モビー・ディック号で行われるハロウィンパーティは、隊長たちがモンスターに扮するのが毎年の恒例になっている。今年はサッチがその役に当たって...

銀の雫

瑞々しいとは言い難い肌に落ちた雫は、身体の線に沿ってシーツへと吸い込まれた。 せっかく揺れない陸にいるのにベッドは悲鳴を上げて揺れ、清潔なふかふかの枕には快楽に蕩けたマルコの頭が埋まっている。限界まで抱え上げられた彼の腿は胸につき、足指は丸まり震えている。エースの左腕に甘い...

T-risk

「サッチィ、これやる」 酒瓶を持ってきた末っ子に、サッチは「あン?」と振り返った。手渡された瓶のラベルにはシンプルに「T」と記されている。 「こないだの戦利品の中に入ってたんだけどさ、なんつーか薬っぽい匂いがするから苦手だ。一番大事そうなところに置いてあったからうまいと思っ...

酒と小鉢と美丈夫と 後編

サッチが「まつよい」の主と化して数ヶ月が過ぎた。会議や出張が入って行けない日もあったが、特に予定がなければサッチは「まつよい」で夕飯をとることが日課となった。評判が評判を呼び、客は日毎に増えた。それと同時に厄介な客もたまに混じったが、そこは自称ボディーガードのサッチが得意の...

酒と小鉢と美丈夫と 前編

「ん? こんな店、あったか?」 営業回りの途中に通りがかった道の奥に見慣れないのれんを見つけ、サッチは足を止めた。路地に入り店の前に立つと、真新しい紺色の暖簾には「まつよい」と染め抜かれており、右下には漢字で「待宵」とある。中からはふんわりと漂う香りに誘われ、サッチは今日の...

朝の挨拶 ~Side A~

「ふぁ~……」 空は快晴。波は穏やか。絶好の航海日和だ。  甲板に出たエースはうーんと伸びをし、だいぶ日が高くなった外の空気を目いっぱい吸い込んだ。  腹は減っているが、とうに朝食の時間は終わっている。多分サッチに強請れば何か出てくるだろう。...

人の心を掴むには

「お、来たな」 宴の後のキッチンに呼び出されたイゾウは、カウンターから聞こえる声にため息をついた。 「今日の主役が何やってんだ」 「もうおれは散々祝ってもらったからいいっての」 リーゼント姿のコックが、ヒヒっと笑った。 寒の戻りが厳しいこの日、モビー・ディック号では四番隊隊...

朝の挨拶 ~Side M~

空が快晴だからと言って、心が晴れているわけではない。  そんなやさぐれたことを考えながら、非番の1番隊隊長はシャワーブースから出た。珍しく深酒をしてしまい、目が覚めたのは朝食などとうに過ぎた時間だった。当然寝起きは最悪で、シャワーでも浴びるかとブースに入ったはいいが、そんな...

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