獣のキス
- 丘咲りうら
- 2018年1月28日
- 読了時間: 6分
「クソコック、ツラ貸せ」
ナミさんに寝る前の飲み物を用意していると、それまで酒を飲んでいたクソ剣士はそれだけ言い残してラウンジを後にした。
「なにアイツ。サンジくん、行く必要ないわよ」
ナミさんはむっとした顔でドアを睨みつけながらおれに声を掛けた。
今でこそ穏やかなサニー号だが、昼間は敵船の来襲を受けててんやわんやだった。
敵はなかなか手ごわく、部屋に非難していたナミさん以外の野郎どもは、皆多少の傷を受けた。
敵が強ければ強いほどヒートアップするのは、男の性なんだろう。
興奮冷めやらず、勝利の美酒に酔いしれながら大騒ぎしていたクソゴムと長っ鼻が潰れて、男部屋へ放り込んだのがついさっき。
あいつらは大騒ぎして発散すれば済む話だろうが、クソ剣士は一緒に騒ぎながらもどこかギラついた目をしたままだった。
サカってんだろうな。
戦闘が激しくなればなるほど、ゾロは燃える。
それはもう魔獣の性がそうさせているのだろう。
だが若い身体は戦闘が終わったからといって、すっと熱までもが冷めるわけではない。
そのもてあました熱を発散するのに、ゾロはおれの身体を使っていた。
いわゆる性欲処理だ。
最初は冗談のつもりで誘った。
戦闘が終わってもギラついた目をした物騒な形相でウロウロしていたので、
何となく「抜いてやろうかクソ剣士サマ?」と声を掛けてしまった。
鼻で笑われるか斬られるかと思っていたが、ヤツはギラギラした目をしたまま「いいのか」と乗ってきてしまい、
ヤツのを抜くだけのはずが乱暴に突っ込まれ、結局最後まで致してしまった。
それ以来、ヤツはサカるとおれを呼び出す。
「ねぇサンジくん、ゾロに・・・その、酷いことされてるんでしょう?アイツのことなんて放っといたらいいじゃない」
縛って甲板に一晩転がしときゃいいのよ、と、いまだに憮然とした表情のナミさんが続けた。
ああ、ゴメンねナミさん。
レディな君を口ごもらせるような心配までさせてしまって。
確かに最初にヤられたときは身体中噛み跡をつけられたし、ケツも切れて腰も立たなくて大変だった。
この狭いメリーの中だ。いくら隠れているとはいえ何度も同じことが起こると、
他のクルーにもおれたちが何をしているかはバレているだろう。
皆の見てみぬふりが、ありがたくもあり申し訳なくもある。
「大丈夫だよナミさん。おれ、結構丈夫だし、アイツを抑えられるのはおれしかいないから」
ゾロのターゲットがナミさんにでもなったら、そっちのほうがたまったもんじゃない。
それに―――
「だって!サンジくんはゾロのことが」
「・・・さ、出来たよ。良く眠れるようにブランデーを少し落としてるから。外、結構寒いから暖かくして休んでね」
ふんわりと香るオレンジ・ペコが乗ったトレイをナミさんに差し出し、そっとラウンジの扉を開けてあげた。
「・・・おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
パタン、とドアを閉じて背中をもたれた。
タバコを1本取り出し、火をつける。
それに、おれ、ヤツに惚れちまってるし。
鷹の目との決闘を見たときから、ゾロはおれの心を掴んだままだ。
初めは、同じ仲間として側にいれるだけでよかった。
それがだんだんとそれだけでは物足りなくなっていった。
少なくともおれは「冗談」なんかじゃなかったんだよな。
身体だけでもあいつが望んでくれるならと、一か八かで声を掛けた。
ヤツはそれにあっさりと乗ってきて、それ以来めでたく後腐れのない身体だけの関係の成立だ。
海賊稼業じゃよくある、たちの悪い「冗談」だ。
「・・・でも、そろそろ限界かなァ」
ふーっと一息に吐き出し、見張り台へと向かった。
「・・・っぅ、あ、・・・・はっ・・・」
みっともない声がマストに響いている気がしてやるせない。
出来るだけ声は出したくないが、まるで本能でその場所を知っているかのようにゾロは的確におれのイイところを突いてくる。
はっ、はっ、とゾロの荒い息が耳元で聞こえる。
それだけでも身体の芯がジンと痺れる。
厚い舌が首筋を這い、形のいい歯が柔らかく噛み付いてくる。
ぞくぞくと背筋を快感が走り、もういっそ噛み千切ればいいのにと思ってしまう。
ゾロをくわえ込んだ場所がきゅぅと切なげに締まる。
「・・・ぅ」
獣のように低く唸る声に、またぞくんと震える。
ふとゾロが動きを止め、じっとおれを見下ろしてきた。
まだ獣の色は残っているが、何度かおれの中で達して少し落ち着いてきたのだろうか。様子を伺うような目でおれを見つめる。
最初の頃はただ興奮を治めるためだけの行為だった。
噛み付いて、ろくに慣らしもせず、無理やり突っ込んで、おれのことなんてお構いなしで。
それがしばらくしてから、こんな風に時折見つめるようになり、まるで獣が毛づくろいをするような動きで
やたらと身体を舐めるようになってきた。
野良猫が人に懐いてきたような、そんな感じになった。
その視線がおれには痛くて、辛い。
「・・・んだよ」
何もかもを見透かされている気がして、ぶっきらぼうに答える。
ふい、と首を横に向け目を逸らせると、ぐっと顎を掴まれ再び上を向かされた。
「・・・っ!」
近づいてくる唇を顔を逸らせて必死でよける。ゾロの唇はおれの首筋に着地した。
「何で嫌がんだ」
「必要ねェだろうがよ」
最近、ゾロはやたらとキスをしたがる。
でもダメだ。キスはダメだ。
「キスってのぁ、メイクラブのときにするもんだ。性欲処理の時には必要ねェよ」
「おれとのセックスは性欲処理か?」
「たりめーだろうが。ていうかてめェの処理に付き合ってんだよおれは」
「じゃぁ何でそんな目で見る」
「・・・ん、だと」
ぎくり、と身体が強張った。
「何でそんなに熱っぽい目でおれを見ると言ってんだ。たかが処理の付き合いによ」
「な・・・に言ってんだ、てめ」
バクバクと心臓の音が聞こえる。
どくんどくんと、頭の中で響く。
「身体は素直に反応するくせに、肝心の心は何も見えねぇ。そのくせ視線だけはやたらねちっこくて熱い。てめェは一体何なんだ」
おれに問いかける、というよりは独り言のようなそれを、おれは呆然と眺めていた。
ねちっこい・・・視線?
そんなつもりはなかった。
あくまでもてめェの処理に付き合ってやってんだという顔をしていたつもりだ。
―――キモい、って思われたか。
「・・・る、かったな。おれの目がイヤなら目隠しでもしてヤるか?そういうプレイもイイかもしんねェぞ」
じわりとにじみそうになる涙を、ぐいっと腕で隠して顔を再びそらした。
その腕をぐっと掴んで引き剥がされ、熱い舌が目尻を舐める。
「教えろ、てめェはおれに何を隠している。抱いても抱いてもてめェの中身が見えねェ。
てめェはそれでよくても、おれァもう限界だ」
―――心ごとおれに寄越せ。全部だ。
囁かれ、抱きしめられ、キスをされ。
今まで抑え込んでいたものが、ぶわっと身体中からあふれ出したような気がした。
「・・・あぁっ、だめだ・・・っ、ゾロ!ゾロ・・・っ!!」
「もっとだ。もっと声出せ。・・・聞かせろ・・・っめェのいい声・・・っ!!」
「ぅあっ!ああ!ああぁぁあっ!!!!」
ぞくんぞくん、と背筋を走る電流が止まらない。
ぐぐっ、と中でゾロが大きくなる。
その感覚に耐え切れず、おれは今まで触れたことがなかった傷ひとつない背中に腕を回し、思いきり爪を立てて果てた。
(おわり)
-------------------------- 19歳のゾロって、こう何か獣っぽいイメージなんですよね。 自分でも自分の感情が分からないというか。本能で動いてるというか。 サンジへの気持ちも自分で整理出来ず、でも本能が欲しがるままに動いてる感じです。 うちの19歳ロロノアの基本姿勢のお話です。
(2013.1.29 pixiv/2013.4.20改稿)
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