「・・・てめェ、頭おかしいんじゃねェ?」
思わず出てしまった言葉だったが、本心としかいいようがなかった。
事の起こりは、皆が寝静まったメリー号のラウンジで突如始まったクソ剣士の告白だった。
「俺はてめェのことが好きかもしれねぇ。だから試しにヤらせろ」
普段寡黙すぎるほどの男はこんなことも端的にまとめるのか、と一瞬納得しかけたが、その内容には突っ込むべきところが山ほどあった。
俺のことが「好き」
「かも」しれない
「試し」に
「ヤらせろ」
むしろ普通のところがないといっても言いぐらい、おかしな内容だ。
どこからどう切り込んでいけばいいのかさっぱりわからない。
それで出たのがさっきの言葉なので、誰も俺を責めることは出来ないだろう。
まっすぐに俺を睨みつけようとするのをやめないマリモ頭に、俺はため息をついた。
「もうどっから突っ込んでいいのかわかんねェ。てめェホモかよ」
「いや、違う」
「じゃぁ何で俺なんだよ」
「それが分かれば苦労はしない」
「で、分かるためにとりあえずヤるって?」
「ああ」
スパンと竹を割ったような明快な答えに、俺は頭痛がした。
こいつ、鉄団子の振りすぎでおかしくなったんだろうか。
「・・・あのなぁ。普通セックスっていうのは、お互いがお互いのことが好き好きで盛り上がって、そんで初めてヤるもんだろうが。お試しで、しかも野郎相手にやるもんじゃねェだろうがよ」
諭すように言ってはみたが、全然分かっちゃいねェって顔をしてやがる。
何度目かのため息をついて俺はヤツに背を向け、キッチンへ向かいながら続けた。
「・・・最近上陸してねェからな。溜まってんだろ。ナミさんの話だとあと2日もすりゃ次の島に着くっつってたから、それまでマスでも掻いて我慢・・・っ!!!」
あっという間に間合いを詰められ、気がつくとくるりと身体を後ろに向けられ、分厚い胸にぎゅうぎゅうと頭を押し付けられていた。
身長差はほとんどないのに、そのがっしりとした腕はびくともしない。
「・・・てめェ、こないだ上陸したとき、男にヘラヘラ愛想振りまいてただろ」
何の脈略もなく低い声でそう問われた。
こないだの・・・上陸?
確かに前に上陸した島は珍しい食材がたくさんあって、色々聞いてるうちに意気投合した店のオヤジのお勧めの店で酒盛りをして船に戻った。
野郎だらけのむさくるしい宴会で、そりゃかわいこちゃんはいたけどそのオヤジの娘さんだし、レディは愛でるもんだ。
でもそれが、何だ?
「てめェが女に甘いのは知ってるが、男にもあんな無防備な顔をしやがるんだと、そのとき思った。
だけど出航してからもそんなてめェの顔がちらついて離れねェ。
次の島でもまた同じことをすんのかと思ったら、うまく言えねェけどダメだと」
―――わかんねぇ。よくわかんねぇけどヤらせろ。
理由らしい理由は今耳に入ってきたが、それを理解するのにだいぶ時間がかかった。
何だそれ。ヤキモチか?
いや、でもヤキモチって、自分が好きだって自覚してやるもんだよな?
でもこいつ、今わかんねェって。
―――ああ、だから「かもしんねェ」のか。
自分でも分かっていない「何か」の感情に、こいつは振り回されて戸惑ってんのか
いささか乱暴に床に押し倒され、クソ剣士は俺の腹の上に跨りじっと見下ろしてきた。
その必死な瞳に、ほだされなかったと言えば嘘になる。
「あーもう。・・・分かったよ。食いたきゃ食え。その代わり残すなよ」
ぐいっと頭を引き寄せて言うと、さっきまでのどこか戸惑ったヤツは姿を消し、獲物を捕らえた獣の表情になった。
「ぅ・・・あ、あ、・・・も、ダメだ・・・そこ、やめ・・・っ!」
ラウンジに自分の恥ずかしい声が響く。
男にフェラされるという普通に生きていたらありえない出来事に、俺の頭は混乱していた。
先っぽをちゅうちゅうと吸われ、時にはちんこをまるごと口に咥えられ、俺は勝手に出てくる声を手で抑えて首を横に振るしか出来なかった。
「・・・・っ!!ぁ!イ・・・っ!!」
目の前が真っ白になり、快感が腰をずんと突き抜ける。
咥えられていた先端にぬめりを感じ、出ちまったことに気がついた。
「・・・わ、わりぃ」
素直に詫びの言葉が口から出る。
いくら惚れてる「かも」しれないヤツのでも、あまり気持ちのいいものではないだろう。
しかしクソ剣士はさして気にする様子もなく、そのまま俺の尻の肉をぐいっと開き、口をつけてきた。
「・・・ばっ!!やめろ・・・!!!っ!!」
自分が出したものがぬるぬるとそこを潤し、ちゅくちゅくといやらしい音が聞こえていたたまれない。
そりゃ男同士ではソコを使うんだろうけど、俺だってホモじゃねェから経験もないし、何よりこの格好は恥ずかしい。
つぷ・・・と圧迫感を感じ息を呑んだ。
ゆっくりと慎重に、ヤツの指が入ってくる。
傷つけまいと、ゆっくりと撫でさするようにそろそろと奥に進んでくる。
キモチワルイの一言だが、食え、と自分を差し出したのだ。ここで逃げるわけにはいかないだろう。
「ふ・・・ぅ・・・ん・・・っ・・・ぁ・・・」
四つんばいで腰を高く持ち上げる格好で、俺はゾロに尻を指で犯されていた。
指はすでに3本入り、ゆっくりと抜き差しされている。
痛くはないが、気持ちよくもない。圧迫感ばかりを感じて正直辛い。
それでも最初にあった違和感は幾分和らいでいた。
「・・・悪ィ。限界だ。加減できねェ」
不意に指を抜かれ、背後から野獣が低く呻き、己の化け物みてェなブツを俺のケツにあて、一気に貫いた。
「―――――っ!!!!ヒ・・・ぃっ!!!っ!」
引き裂かれるような感覚に声も上げれず、俺はのけぞった。
無意識に腰が引けて逃げようとしたが、しっかり俺の腰を掴んだ獣の手がそれを許さない。
「・・・ってぇ!・・・いてぇってば・・・!!っ!!」
なりふり構わずボロボロ泣いて抗議をするが、野獣は動きを止めない。
「言った、だろ・・・、・・・加減、出来ねェって・・・!」
背後から耳を噛まれ、荒い息でそう答えられ、痛みと苦しさで俺の頭はぐちゃぐちゃになった。
「・・・れ、んだ!・・・俺ンだ・・・!クソコック・・・ッ!!!」
遠いところでうわ言のようにゾロがそう囁いたのが聞こえ、ぼんやりとその意味を理解すると、身体が勝手にきゅぅと震えた。
それとほぼ同時にゾロが俺の中に劣情を迸らせるのを感じながら、俺は意識を手放した。
「・・・気づいたか」
まだぼーっとした意識の中で、ゾロの声が聞こえる。
ああ、おれ、そうだ。こいつにヤられて・・・。
起き上がろうとすると腰に激痛が走ったが、根性で起き上がる。
「悪かった」
素直に謝る未来の大剣豪に、俺はいぶかしげな顔をしているように映ったんだろう。
「ヨすぎて加減できなかった」
そんなストレートに言われても、おれは返す言葉がない。
けどまたヤる前の戸惑った表情に戻ったマリモ頭を見て、何だか笑えてきた。
「で、お試しはどうだったよ、クソ剣豪サマ」
やつは目を大きく見開き、怒ってないのか、とその瞳が問いかけてきた。
「てめェが言ったんだろうがよ。試しにヤってみてェって」
その瞳が細められ、再び獣の色が光る。
「ああ。よかった。…おれァこれからてめェを全力で口説く」
愛の告白とは程遠い、まるで宣戦布告のようなそれに、俺は思わずにやりと笑った。
「は、ちっとも甘くねェな。ま、せいぜい頑張ってオトとしてみるんだな」
不自然にならないように気をつけながら立ち上がり、俺はマリモに背を向けてラウンジを後にした。
内側から引き裂かれるような痛みは、俺に幾ばくかの恐怖心を植え付けている。
下肢をとろりと伝う残滓が、情事の生々しさを思い出させる。
お試しっつーか、完全に獣のマーキングじゃねェかよ。
その獣が目覚めた。
俺を口説く、だと?
・・・じゃぁ、俺はどうしたい?どうすればいい?
答えの出せない感情を抱えながら、がくがくと震える足を励まし風呂へと向かった。
--------------------------------------------- フォロワーさんのお誕生日に押し付けたSSです。 リクエストは「下肢をつたう劣情の証に、あれは夢じゃなかったんだと思うサンジ」だったんですが、何を勘違いしたのか「中出し」に変換しちゃったんですよね。 書きあがってUPしてから「私、中出しなんて言ったっけ?」と言われ、 Σ(゚Д゚)ハッとして慌ててその後を書きましたww
(2013.2.10~20 pixiv/2013.4.26改稿)
Kommentare