「・・・この島には物の怪でもいるのか?」
宿に向かっているはずが港に停泊しているサニー号の眼前にたどり着いたゾロは、半ば本気でそう思った。
もちろん物の怪などいるはずもなく、いつもどおりの方向音痴で奇跡的に船に着いただけだが。
もうすっかり夜も更けている。
今日の船番はコックなので、このまま船に戻るほうがうまいものにありつけるだろう。
さして深く考えず、ゾロはメリー号へ向かった。
「・・・てめェなァ、迷子をこじらせて帰ってくるならもっと早く帰って来いよ。今から街に出ても寝静まってんだろうが」
ラウンジのドアを開けると、サンジがほろ酔いで寛いでいた。
不可抗力だ、と言い返そうと思ったが、そうは言いながらもキッチンに移動して簡単な食事を作るサンジの機嫌を損ねてもいいことはないと思い直し、どっかりと腰をおろした。
「もうちょっと早かったらお姉さまと素敵な一夜を過ごせただろうによォ。まぁ迷子が自力で船に戻れただけでもミラクルか」
どうせメシ食ってねェんだろ、と差し出された食事を前に、ゾロは行儀よく手を合わせて口に運んだ。
他愛のない話をしながらゾロが食べ終えるのを見届けると、サンジはふらりと席を立った。
「・・・おれァ風呂行ってくる。メシ代がわりに見張りしてろ」
「おう」
どこかよそよそしい雰囲気を孕んでいたが、ほろ酔いでそう見えるのだろう。
ゾロはさして気にせず酒を煽った。
―――遅い。
外は特に変わった気配も感じないし、何の気なしにサンジが出てくるのをラウンジで待っていたゾロだったが、一向に風呂から上がらないサンジを怪訝に思い始めた。
自分と違って毎日風呂へ入るサンジが女並みに長風呂なのは知っていたが、それにしても今日は遅すぎる。
ラウンジで見たサンジは、いつもより酒量が多いように感じた。
悪魔の実の能力者でもなく、ましてや海賊なんぞやっている身で風呂で沈んでるということはないだろうが、朝まで放っておいて面倒なことになっていても夢見が悪い。
一応、様子を見ておくか。
やはり深く考えず、ゾロはバスルームへ向かった。
「クソコック、開けるぞ」
一応宣言してドアを開けると、ざあざあとシャワーが降り注ぐバスルームの真ん中にサンジは呆然と立っていた。
「てめ・・・」
ゾロが絶句するのも無理はなかった。
サンジは今にも零れ落ちそうな程、瞳に涙を浮かべていた。
―――勃ちあがった自身を握りしめて。
うつろな目がゾロをとらえると、とうとうその瞳からほろほろと涙がこぼれた。
「わり・・・ぃ。おれ・・・やっぱてめェが好きだ・・・おれやっぱりてめェとこういうことがシてェ・・・」
酔っているのか何なのか、普段ゾロの前では絶対に見せない涙をぽろぽろと落としながら、サンジはひたすらゾロに謝った。
あまりに唐突すぎて状況がさっぱり理解できないゾロだったが、サンジの頭に降るそれが湯ではなく水ということに気がつき舌打ちをした。
このまま放っておくのは危険と本能が判断し、服のままバスルームに足を踏み入れシャワーを止めた。
「とりあえず上がれ。話はあとで聞く」
いくら気候が安定した春島とはいえ、夜は冷える。
どれだけ長い間水に当たっていたのだろう。
芯まで冷え切った身体にバスタオルをかけて席を外そうとしたが、サンジは動こうとしなかった。
その仕草に焦れていささか乱暴に身体を拭き、引きずるようにしてラウンジに連れて行った。
「タチの悪い酔っ払いだな」
ゾロが危惧したとおり、サンジの酒量は普段のそれよりも大幅に多かった。
自分だけだからと油断したのだろう、そのままシンクに大量に下げられていた酒瓶の数がそれを物語っていた。
平然としていたが、もしかすると立っているのもやっとだったのではないだろうか。
サンジはゾロが差し出した1杯の水を飲んで毛布を被り、机に突っ伏したまま動かないが、起きていることは確かだ。
先ほどよりは少し冷静になっているのだろう。
だからこそ、顔を上げることが出来ない。
「おら、どういうことだ。ちゃんと話せ」
「・・・悪かったよ」
まるで母親に叱られた子どものように、サンジはぼそぼそと詫びた。
「ちょっと酔・・・」
「酒のせいにすんな」
想定内の言い訳を、ゾロはぴしゃりと遮った。
逃げ道を塞がれ、サンジはまただんまりを決め込んだ。
「・・・てめェ、おれに言いたいことがあるんじゃねェのか」
追求を諦めたわけではないゾロにさらに問われ、サンジはどうにかならないかと足掻いてみた。
「・・・あー、忘れてくれると助かるんだが」
「あんな状態を見せられてか?」
ゾロは容赦なく逃げ道を潰していく。
いっそ自分の心も一緒に潰して欲しい。
「怒ってるわけじゃねェ。別に引いてもいねェ。てめェが何を考えてるか知りてェだけだ」
静かに諭すようなゾロの声に、サンジはぴくりと反応した。
「ここまで来ちまったんだ。全部吐いちまえ」
ああ、ズルい。そういう聞き方はズルいとサンジは思った。
サンジはこのまま貝にでもなってしまいたい気分だったが、一方のゾロはサンジに聞きたいことが山のようにあった。
前回上陸したときに、ゾロは見張りの船上でセックスを誘ってきたサンジを追い出した。
初めて身体の関係を持ちかけられたときは驚いたが、他でもない密かに想いを寄せていた本人にそう言われ、ゾロは高揚した。
きちんとした言葉はなかったが、あの女尊男卑の男がそのプライドを捨てて男の自分に抱かれるということに、サンジも自分と同じ想いだと思い込んだ。
惚れた相手には常に触れていたいものだと、ことあるごとにクルーの目を盗んでいたるところへ引っ張り込んだが、毎回毎回「仕方なしに付き合ってやる」というスタンスで誘いに応じ、そのくせ声も何もかも押し殺して苦痛に耐えるだけのサンジを見るのが辛かった。
何度も繰り返された行為だったが、身体も心もぎこちない。
この男が一体何を欲しているのかが、いい加減分からなくなったのだ。
あの晩も、悲壮感漂うサンジから誘いを受けたが、ふつふつと滾っていたその気持ちが爆発して、初めてゾロはサンジを拒絶した。
あァそうかよ、とあっさりと引きさがって船を降り、適当な宿でも見つけるかどこぞの酒場で飲み明かして帰ってくるかと思っていたサンジが、翌朝壮絶な色気を纏って船に戻ってきた時、ゾロは少なからず動揺した。
しかし聞くに聞けない雰囲気が、サンジを包み込んでいた。
それから今回の上陸まで、サンジがゾロを誘うことはなかった。
一度ゾロのほうから強引にサンジを格納庫へ引きずり込もうとしたが、いつものケンカとは違う渾身の蹴りを食らって船外に放り出された。
それ以来、2人の間にはどことなくぎこちない空気が流れていた。
あの島で何があったのか。
あの晩、サンジの身に何が起きたのか。
問いただしたかった。
しかし、自分にはその資格がないように思えたのだ。
サンジの心は誰のものなのか。
自分にあると思っていたのは、驕りだったのだろうか。
ではさっきの突然の告白は一体何なのか。
ゾロには理解できないことだらけだった。
「てめェは何でおれに抱かれようなんざ思ったんだ?」
だんまりを決め込むサンジに、ゾロが穏やかに問いかける。
「・・・てめェがもの欲しそうな顔してたからだ。まかり間違ってナミさんに被害がいったらたまったもんじゃねェからな」
「てめェはもの欲しそうな顔をしてるやつがいたら、誰かれ構わずほいほい股を開くのか?」
あまりの物言いに、サンジは思わず顔を上げた。
ぎっと睨んで言い返そうとしたが、ゾロの穏やかな、しかしまっすぐな瞳に捕らわれ、その勢いはなくなった。
「おれに惚れてるってのは本当か?」
埒が明かないので一番聞きたかったことを単刀直入に尋ねると、サンジはその瞳を逸らした。
「・・・悪かったな」
「だからそんなこと言ってねェだろうが。じゃぁ認めンだな」
酔っていたとは言え、あんな場所で、あんな格好で、あんな言葉を口走ったのを見られて聞かれたのだ。
逃げ道はことごとく塞がれていく。
さすがのサンジも観念した。
「ああ」
まっすぐにゾロを見つめて答えた。
もうどうにでもなれ。
その返事を聞いて、ゾロはため息をひとつ漏らした。
「聞くがよ、てめェそれを一度でもおれに伝えた記憶があるか?」
サンジは思わず目を瞠った。
何を言い出すんだこの剣士は。
そんなこと言えるわけがない。
野郎が野郎に告白だなんて、よくて嘲笑、悪ければ仲間といえど斬られても文句は言えない。
だが、ただ横に居るだけでは辛すぎた。
せめてはけ口でも何でもいいので、身体だけでも欲してほしかった。
だから身体の関係に徹していたのに。
「ねェよ」
あるわけがない。
最中に口走りそうになるのをどれだけ堪えたか。
斬られても構わないと想いを伝えようと決心しては諦めた夜を、何度過ごしただろうか。
「だろうな」
ゾロもあっさり肯定した。
「おれも聞いた記憶がねェ」
だがそのあとの言葉を聞いて、サンジは自分の耳を疑った。
「それと、おれもてめェに言った記憶がねェ」
しばらくの沈黙のあと、ゾロが再び口を開いた。
「おれァ、あまり口がうまくねェ。だからてめェにも誤解をさせてたのかもしれねェ」
サンジの心臓が早鐘のように打ち付けられる。
「てめェにはどう映ってんのか知らねェが、おれァこんな狭い船の中で何とも想ってねェやつと懇ろになったりはしねェ。ましてや男とだなんて論外だ」
心臓の鼓動が耳に響く。このまま突き破ってしまうんじゃないだろうかと頭をよぎる。
「てめェだから欲しいし、てめェだから抱きてェ」
ゾロは立ち上がってテーブルを回ってサンジの横に座り、肩を抱いた。
てめェは違うのか?と聞かれ、サンジは黙って首を横に振ることしか出来なかった。
「おれだっててめェと一緒だ。惚れてるから触れてェ。感じてェ」
「・・・泣くな」
言われて初めて、サンジは自分が泣いていることに気がついた。
ふっと緊張が解け、ガクガクと身体が震えだした。
身体の冷えからくるものか、それとも別の要因なのか。
「どんだけ水被ってやがったんだ、このバカコックが」
そうは言いながらも、肩を撫でる手は暖かかく優しかった。
伝えようとしなかったサンジと、伝わっていると思い努力をしなかった自分。
小さな歪(ひずみ)がやがて大きなすれ違いを生み、取り返しがつかなくなるところだった。
ふつふつと独占欲が湧き上がる。
―――この男が欲しい。
自分のものにしたい。
まだ、間に合うだろうか。
どれぐらいそうしていただろうか。
ふるりとサンジの腰が震えた、ように見えた。
「・・・なァ」
ゾロは自分でも驚くような甘い声で、サンジの耳元で囁いた。
「暖めてェっつったら、また蹴るか?」
サンジの耳がふっと赤くなった。
「だから・・・そういう聞き方はずりィ」
消え入りそうな声でそれは続いた。
「おれだって・・・てめェが欲しいって言っただろ。何度も言わせるな。・・・このアホマリモ」
船上でのセックスは慌ただしいもので、常に着衣のままだった。
こうやって明るいラウンジで毛布を下に敷いて互いが全裸になるなど、今まではありえなかった。
かたかたと震えるサンジの脳裏に、エースの言葉がよぎる。
―――好きなヒトとセックスするんなら、楽しまないと。
恥ずかしい。
とてつもなく恥ずかしい。
しかし、他でもないゾロが自分を求めてくれている。
自分だって、風呂から上がれないぐらいゾロに欲情してしまったのだ。
震える手を励まして、ゾロの首に腕を回す。
「・・・あったけェ」
思ったことを口にすると、少し緊張が和らいだ。
「・・・っん・・・ァ・・・は・・・ァ」
しつこいぐらいに唇を吸い中をねぶると、次第にサンジから甘い声が漏れ始めた。
するりと腰を撫でるとびくりと震え、吐息がさらに甘くなる。
以前のサンジは、キスの時だけは多少リラックスして応じた。
なのでこわばるたびに宥めるようにキスをしようとすると、「そんなのいらねェ」と拒否をされた。
そのときはまったく不可解な行動だったが、今なら分かる。
自制がきかなくなるのだろう。
「・・・ぁ・・・あぁっ!!」
胸の飾りを優しくつまむと高い声があがり、自分の声に驚いたサンジは思わず口を押さえた。
じっと自分を見つめる瞳から、気まずそうに視線をそらす。
「・・・悪ィ。野郎の声なんて萎えるよな」
そっぽを向いたまま自嘲気味に呟くサンジの耳元にそっと顔を寄せた。
「もっと聞きてェ。聞かせろ」
そんなことを囁かれ、ぞくぞくと耳から全体へ甘い痺れが広がる。
一度声を出してしまうと、抑えることができない。
下肢を存分に愛撫され出てしまう甘ったるい声が、なけなしの理性を奪い支配していく。
力が抜けたところでゾロは一度身を起こし、脱ぎ捨てた服から何やら取り出した。
「・・・てめ・・・それ・・・」
ゾロが手にした見慣れない薄ピンク色の容器を見て、サンジは再び身を硬くした。
「ああ。さっき街で買ってきた」
いわゆる潤滑剤と呼ばれるものだった。
「・・・何、買ってやがんだ」
「野郎同士はこういうのを使ったほうがいいらしい。心配すんな。ヤバイ薬とかじゃねェ」
とろりとゾロの手に落とされたジェルの艶めかしさに、思わず赤面してしまう。
この男は、たまさかの上陸で何をしてきたのだ。
酒も女も買わず、わざわざこんなものを買ってきて、まっすぐ(は、不可抗力だろうが)船に戻って自分を抱いて。
どうかしてやがる。
しかしそんな男に抱かれて喜ぶ自分も、どうかしている。
潤滑剤をサンジの性器にたっぷりと落とし、ぬるぬると竿全体に伸ばして温まったところで、ゆっくりと秘孔に指を埋めていく。
「う・・・ぅ・・・」
先ほどまでの快感とは程遠い、言いようのない排泄感に、サンジの身体にざっと鳥肌が走る。
「息吐いとけ。楽にしてろ」
節ばった指が慎重に、しかし確実に奥へと進んでくる。
うまく力が抜けず、再び力が入り食いしばる歯を、ぬるりとゾロの舌がこじ開け呼吸を促す。
進めては止まり、止まっては進むを繰り返し、2本の指が根元まで埋め込まれた。
「痛ェか?」
少し掠れたゾロの声が心地いい。
「・・・痛かねェ・・・けど・・・」
「ヨくもねェ、か」
「・・・悪ィ」
「謝んな」
さてどうしたものかとゾロが思案していると、サンジの甘く掠れた声がゾロを呼んだ。
先ほど口で性器を愛撫していたときのうわ言のようなそれとは違う声に、耳を傾ける。
「・・・も、うちょい・・・奥・・・。・・・腹の方」
真っ赤になりながら指示してきたそれに従うように、指を奥へと進めた。
すると、
「・・・ゃ!あぁああっ!」
今までとは違う、ひときわ甲高く甘い声に、ゾロの股間がダイレクトに反応した。
ちょっと出てしまったかもしれない。
「・・・っ、ここ、か?」
聞いただけでこちらがイってしまいそうな嬌声に耐えながら、見つけたそこを優しく擦りあげる。
「ぁあっ!!!そ、そこ・・・あ、あ、・・・きもち、い・・・ぅあぁっ・・・ああ!!」
しっかりとゾロにしがみつきながらも目はうつろになり、与えられる快感に溺れるサンジに、ゾロはぎりりと歯を食いしばった。
―――てめェ、本当に何してきやがった・・・!
あっという間に緊張がほぐれ、3本目の指もすんなりと迎え入れたサンジのそこは、ねだるように奥へ奥へとゾロを誘った。
「ぞろ・・・ゾロ・・・も・・・」
「ああ。・・・限界だ」
ずるりと指を抜き、いきり立った自身に潤滑剤を乱暴にぬりつけると、サンジの足を大きく広げ、抱えあげた。
互いに、初めてではないのだ。
何度も身体を重ねたことがある相手だ。
しかし想いが通じ合い、互いがリラックスしたセックスは、こんなに違うのか。
今までとは全く違う感覚に、どちらも溺れた。
「すげ・・・てめ・・・っ」
ガツガツと打ち付けられる衝撃に、サンジはただひたすら甘受し、喘いだ。
「あ・・・っ!・・・あっ・・・あぁ・・・や・・・っ!!・・・っろ・・・ゾロ!」
容赦ない突き上げにも関わらず、サンジの性器はしっかりと勃ちあがり、先端からはとろとろと蜜を零していた。
無意識なのかそうでないのか、サンジの腰が先ほど自分が示したそこへゾロの剛直を押し付けるように揺れる。
「い・・・いぃ・・・ぞろ・・・きもちぃ・・・ぞろ・・・っ」
ゾロは足を自分の背に絡め、再びうわ言のように自分の名を呼び続けるサンジに熱い情を抱きながらも、その反面で黒い感情が沸き起こる。
ずるりと剛直を抜き、サンジをうつ伏せにして尻を上げさせた。
腰に跨ってその金髪をぐいっと引っ張り、耳元に顔を寄せる。
「・・・ぁ・・・」
服従の姿勢にサンジの喉がしなる。
欲情した口元から、唾液がこぼれた。
「―――あの日・・・てめェに何があったかは、詮索しねェ。過ぎたことだ」
少なすぎる会話が、お互いに誤解を生んだ。
サンジの身に「何か」が起きたのは、おそらくそれが原因だろう。
ゾロの心を知らなかったサンジの行動を責めることは出来ない。
言葉足らずだった自分にも非はある。
もう少しちゃんと向き合っていれば、こんな感情は抱かずに済んだかもしれない。
しかし―――
はしたなく口を開けたままの秘孔に、再びゆっくりと自身を埋め込みながら続けた。
「あ・・・あ・・・ぁ・・・」
「だが2度目はないと思え。てめェは・・・おれのモンだ。・・・クソコック!!」
ずちゅ、ずちゅ、と早くなる律動に耐え切れず、サンジはがくがくと首を立てに振って耐えた。
「・・・っ、ねェ・・・っ!・・・も、・・・しねぇ・・・からっ!あぁ!・・・イ・・・っ!イく!・・・イク・・・っ!!!ぞ・・・ろ!・・・アァアアアアっ!!!」
サンジは身体を痙攣させ、前への刺激を与えられることなく大量の精液を迸らせた。
その返事と痴態に満足しながら、ゾロもサンジの中へと存分に欲望を注ぎ込んだ。
夜が明けようとしている。
目覚めたのはゾロの腕の中だった。
どろどろになるまで愛し合い、気を失うように眠りに落ちた。
全裸のまま寄り添い、腰にはゾロの太い腕がしっかりと巻きついていることに気がついて苦笑する。
ドーブツみてェ。
恥ずかしげもなく声を上げ、もっともっととねだり、本能の赴くがままにゾロを求めた自分も、おれのモンだといわんばかりに抱きしめたまま深い眠りに落ちているクソ剣士も。
もう何も、隠すことなんてねェな。
ひとり胸のうちに秘めていた辛く切ない想いを開放し、サンジの胸中は暖かさに満たされた。
―――いや、ひとつだけ。
昨夜のゾロのあのセリフは、「何か」に勘付いている証拠だった。
証拠や裏づけなどない、本能的な直感で読み取ったのだろう。
しかしあの夜がなければ、ゾロとこのような関係になることはなかっただろう。
後悔はしていない。
「嘘をつく」と「本当のことを言わない」は似て非なるものだ。
全てを伝える必要はない。
レンアイには、多少のスパイスも必要だ。
「・・・サンキュな」
誰ともなくそうつぶやくと、サンジはゾロの分厚い胸板に頬をすりよせ、再び眠りについた。
(おわり)
-------------------------- やっと・・・やっと出来ました。 前提と言いながら全然進まなかったゾサ! いつになったら出来るんだと思ってました私も← ほらね、ちゃんと続きがあったでしょ? (2013.5.9)
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