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執筆者の写真丘咲りうら

レッスン代はいかほどに (エース×サンジ)

更新日:2018年1月30日

「よ、サンちゃん♪」

男臭い喧騒にまみれた酒場でひときわ目立つ金髪が、弾かれたように顔を上げた。 「・・・エース!」 くるりと巻いた眉毛が特徴的な顔に黒スーツ。いつもどおりの隙のない姿の人物が嬉しそうに返事をした。

「久しぶりじゃねーか!エースんとこもこの島に停泊してんのか? あー、ルフィのやつ今日は向こうの小島に泊まってんだよ」 会わせてやりたかったなぁと悔しそうに言うサンジに、エースはいやいやと笑った。 「今日はお忍びでさ。誰にも会うつもりなかったんだけど、サンちゃんがいたからつい声かけちまった」 人懐っこく笑うエースに、サンジも自然と笑みがこぼれる。 「おれ今日1人なんだよ。ヒマなら一緒に飲もうぜ」 そういって隣の席をすすめ、ほどなくして2人は再会を祝してグラスを合わせた。

「ふーん。じゃぁルフィたちは全員向こうの小島に?」 酒を酌み交わしながら、とりとめもない話をする。 「何かリゾートがあるらしくってさ。ナミさんがどうしてもコンドミニアムに泊まりたいからって、全員連れていった」 今ちょっと懐がぬくいんだと、サンジが笑う。 「船の見張りは?」 「・・・あー。クソマリモが1人でやってる。迷子は船から出さねェのが一番だからな」 突然の歯切れの悪さに、エースは「ん?」と首をかしげた。 酒場で見かけたときから気にはなっていたが、今日のサンジは普段とは何か違う。 お忍びだったはずが、つい声をかけてしまうほどに。 本人は隠しているつもりだろうが心ここにあらずで、自慢の眉毛もどことなくへにゃんと垂れ下がっている。

「ね、サンちゃん。・・・ゾロと何かあったの?」 ずばりと聞いてきたエースに、サンジはたじろいだ。 否定をしないということは肯定ということなんだが・・・サンジはそれには気がついていない。 「サンちゃん、話してみて?おれが力になれるか分からないけど、話ぐらいなら聞くよ?」 しばらくグラスを見つめていたサンジだったが、一気にそれを煽り、ぽつりぽつりと話し始めた。

「じゃぁつまり、ゾロとは身体だけの関係ってこと?」 相変わらず直球のエースだったが、もう慣れたのかサンジは素直に頷いた。 「おれだってさぁ、何が楽しくてあんな筋肉マリモにって思うけどさ。しょうがねェよなぁ。惚れちまったもんはよォ」 とろりと酔った瞳で空になったグラスの氷を眺めながら、サンジは愚痴をこぼした。

サンジの話をまとめると、ゾロにうっかり惚れてしまったサンジはキモチは手に入らなくても身体だけでもと、ゾロと関係を持ったらしい。 しかしゾロは相変わらずの朴念仁で、自分がヤりたくなったら昼夜構わずサンジを人気のないところへ連れ込むという非道っぷりだった。 それでも惚れた欲目かサンジは極力応えていたが、いつになってもちっともキモチヨクならない。 何となく愛撫っぽいものはしてもらえるらしいが、いざ入れるときはいつも身体が強張り酷い激痛が走る。 いつかは、いつかはと思いながらも心と身体は真逆の反応を示し続けていることに少々疲れていた。

今日もサンジは見張りのゾロと一緒に船に残るつもりだったが、見張りにいつも作る食事を作り終えていざ誘うと、「今日はいい。てめェ街に出て宿でも取ってこい」と追い出されたらしい。 これにはさすがのサンジも堪えたらしく、行くあてもなくフラフラと街を歩き、たまたま入った酒場でエースと出くわしたというわけだ。

「おれさぁ、好きなヤツとセックスしたら絶対気持ちよくなると思ってたんだよ。なのに全然ヨくなくてさぁ。やっぱり片想いじゃダメなのかなぁ」 酒が回ってきたのかじわっと目尻に涙を浮かべるサンジに、危ないなァとエースは深くため息をついた。

おそらく女との経験なんぞないのであろう、夢見がちな思想。 もしかしたら、まだ「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」と本気で思っているのではないだろうか。 男でも見惚れてしまうほどの端正な顔立ち、しなやかな痩身、美しい金髪の外見に憂いを含んだ表情などしていたら、ソッチの気がない男でもその気にさせてしまうということを、彼は分かっていない。

「ねェ、サンちゃん」 エースにむくむくと悪戯心が湧き上がる。 しかしサンジはそれに気づかず、エースの優しい声に顔を上げた。 サンジの瞳がエースを映す。 「ゾロとキモチヨクなりたい?」 涙が零れ落ちないように何度もまばたきをしながら、うつむき加減にこくんと頷く。 そこから垣間見える彼の幼さが、今から進めようとしていることに歯止めをかけるのか、それとも――― 「おれ、さ。それ協力してあげられるよ?」 己が映ったサンジの瞳を捕らえるように、声音に甘く優しい火を灯す。 怖がらせないように注意を払いながら、そっとサンジの耳元で囁いた。

―――いちど、おれと寝てみない?

メシ、一緒に食わない?みたいなノリで言われたので瞬時には理解できず、サンジはきょとんとエースを見つめ返す。 「サンちゃんがちょっと変わるだけで、多分すっごくヨくなると思うよ?」 時間差でようやく何を言われているのかに気がついたサンジは、ふっと目を逸らし小さくなったグラスの氷をくるくると回す。 耳が赤い。 「深く考えなくていいよ。そう・・・サンちゃん風に言うなら愛のレッスン、かな」 「や・・・だって・・・」 否定をしないということは・・・なのだが。 「ゾロのことが好きだっていうサンちゃんの気持ちは尊重するよ。これはレクチャーだからさ。おれは数に入れなくていいんだよ」 浮気にはならないから、と悪魔が優しく囁く。 酒のせいだけではないふわふわとした頭を懸命に回転させ、サンジはぐるぐる考えたが――― 「絶対キモチヨクしてあげる。ゾロとこんなふうにシたいって思えるように、ね」 甘く優しく続けられる囁きに、サンジはとうとう頷いた。

「うー・・・」 酒場の上の宿を取り、軽くシャワーを浴びてベッドの淵に腰をかけたサンジは、まだ少し迷ってるようだった。 濃厚な雰囲気になってしまった酒場を離れ、外気に当たって宿でシャワーを浴びたことで、サンジは見た目にも少し冷静になっていた。 酒が入っているとはいえ、今からやろうとしていることはちゃんと理性を保った上で理解しているのだろう。 だからこその葛藤だった。

「やっぱりやめる?」 サンジの横に座りながらエースが尋ねると、サンジはうつむいて首を横に振った。 「嫌がることはしないし、痛いことも怖いこともしない。サンちゃんだって、ゾロとキモチヨクなりたいんでしょう?」 今度は真っ赤になって首を縦に振った。 可愛いなァと思いながら、サンジの金髪を撫でる。 レクチャー、とは言ったし、もちろん約束どおり満足のいく結果を出してやるつもりだが、エースとて男。 据え膳を美味しく頂くつもりで誘ったのに、ほいほいついてきたこの青年はどこまで自分の思惑を理解しているのだろうか。

丸い頭を引き寄せて唇を重ねる。 びくっと強張る身体を抱きしめ交合を深くする。 おそらく少し強引なほうが好みだろう。 「・・・ん、ん・・・ぅ」 その読みは当たり、とらえた舌を軽く吸ってやると甘えるような声を出し、もっととねだるように絡めてくる。 さらさらとうなじを撫でながら唇をちゅ、ちゅと音を立てて吸い、ときに甘く噛みねぶってやると、サンジの身体からは徐々に力が抜けていった。

「・・・は、ぁ・・・」 「キス、好きなんだ」 軽く肩で息をするサンジに、エースは甘く囁く。 こくんと、先ほどよりは素直にうなずくサンジを見て、エースは優しく微笑んだ。 再びきゅぅ、とエースの服を掴んでこわばったサンジの手を取り、ゆっくりと押し倒してその腕をベッドへぬいとめた。

「サンちゃん。今日はイヤとダメは禁止ね」 「・・・え?」 「イヤとダメは、全部『イイ』に変えてみよっか」 エースの言葉の矛盾に気付く暇も与えられず、柔らかな物腰ながらも有無を言わせない提案に、サンジは頷くしかなかった。

「ふぅ・・・あ、あ・・・や、・・・っだぁ」 バスローブをはだけられ、胸の飾りを含まれて身体は固く強張り、サンジはたまらず禁句を口にしてしまった。 その直後に胸に鋭い痛みが走る。 「・・・っ!!・・・ってぇ」 エースが強く歯を立てたのだ。 「ダメだって言ったろ。何て言うんだっけ?」 「・・・ぅ・・・」 「・・・『イイ』、でしょ?言ってごらん」 少し赤くなってしまった実に謝るかのように唇を寄せ、ぺろぺろと舐めあげながらサンジの答えを待つ。 「・・・ぃ・・・い」 ふっと、サンジの身体から力が抜けた。 その動きと声を確認し、ご褒美と言わんばかりにちゅぅと吸い上げた。 「・・・ぁ!ああ!」 「もいっかい」 ちゅくちゅくと吸い上げながらもう一度促す。 「あ、・・・ぁ・・・!・・・いぃ・・・いい・・・!」 さらに力が抜けた身体を眺めて、エースは微笑んだ。 「ほら、イイでしょ。口に出したら、もっとキモチヨクなるんだよ」 サンジの少し潤んだ瞳が見開き、エースを映し出す。 「サンちゃんは自分を抑えすぎなんだよ。もっと楽しまなきゃ」

憶測ではあるが、サンジはゾロとのセックスのときはずっと身体を強張らせているのだろう。 愛撫を受けても避けるように、快楽を無意識に否定するように、拒絶の言葉を口にして。 ゾロを受け入れる時もおそらくガチガチに緊張して、思うように力が抜けていないのではないだろうか。 それでは何をどうしても快感を得ることは出来ない。

――――怖がらずに自分の快楽に素直になること。

これだけで身体はずいぶんと変わるというのをサンジに伝えることが出来れば、それでことは足りたのだが。

どうせなら、ねぇ。

「据え膳は遠慮なく喰う」と言い切る煙に包まれた大佐の言葉を思い浮かべ、エースは次のステップへ進むことにした。

「・・・ん、そう・・・上手だよ。・・・ゆっくりでいいから」 自分の股間で上下する金髪を愛しそうに撫で、エースはさらに言葉を続ける。 「強くやろうとか激しくとか思わずに。ゆっくり舐めて・・・ぁっ、そう・・・イイよ」 ゾロのそれよりも細身の、それでも十分に質量のあるエースのペニスを含みながら、サンジはエースが高まっていくのを感じた。 こらえようとしない、時折漏れるエースの切なげな声に、ずくんと腰が疼く。

エース、すげェキモチよさそうだ。

男の喘ぎ声なんて、気色悪いだけだと思っていた。 だからゾロとのときだって極力抑えていたのだ。 恥ずかしさなのか、背徳感なのか、その両方か。 声が出そうになるたびに拒絶し、身体を緊張させて耐えていた。 もしそれが苦痛を引き起こしているのだとしたら―――

エースの素直な声は、同性の自分が聞いてもどこか艶めいたものを感じてしまう。 自分が与える快感に素直に反応してくれるエースに、まるで自分も愛撫をされているような錯覚に陥る。

「サンちゃん、おれに跨って後ろを向いて」 上ずった声でエースがサンジを自分の上に導く。 サンジが恥ずかしさをこらえて言われたとおりにすると、エースは目の前に来たサンジの尻たぶを両方の親指で開き、ためらうことなく後孔に舌を這わせた。 「・・・っ!あぁ・・・っ!!!」 自分でも目にすることがないそこを舐めねぶられ、サンジは恥ずかしさのあまりおかしくなりそうだった。 しかし本人の意思とは裏腹にひくひくと物欲しげにうごめくそこに、エースはいつのまにか手に取ったローションを塗りこむ。 「柔らかいなァ。1本ずつ入れるよ」 言葉と同時に細い指が中に入り込む。 ゆっくりと進む指の動きが、サンジの意識を奪おうとする。 「あ!・・・ぁ・・・ん・・・ぁああ!!エース、エース・・・っ!」 「・・・ほら、お口。お留守になってるよ」 「ん・・・ぐ・・・っ」 ぐいっと口腔に突き入れられたエースのペニスに一瞬声を詰まらせるが、やがておずおずと口での愛撫を再開した。

「きもちいい?サンちゃん」 エースの甘い問いかけに、ペニスを含みながらこくこくと頷く。 異物を受け入れながらもみるみるとほぐれるそこに、エースは容赦なく2本、3本とずぶずぶと指を埋め込む。 「あ・・・っ、は・・・ぁ・・・、きもち・・・ぃい・・・」 サンジが答えると、ずるり、と指が自然に奥へと進んだ。 「・・・っひ!あ・・・あぁ・・・っ!!」 「サンちゃんすごい・・・ここ、ナカに勝手に・・・ほら・・・聞こえる?」 ぐちゅぐちゅと卑猥な音をわざと聞かせるように、エースの指が動く。 その指が前立腺をえぐるような動きになり、サンジは何も考えられずにただ快感に喘いだ。 「ふ・・・ぁ!!あ・・・!あぁ・・・!い、ぃ・・・あぁ!!」 サンジの口から零れた唾液が、そそりたつエースのペニスにぽたぽたと滴る。 その刺激に、エースの腰もぶるりと震えた。 「ココ・・・ね。ちゃんと覚えて。ゾロに教えてあげるんだよ?」 こくこくとうなずき、サンジは夢中で腰を揺らした。

「ね、サンちゃん・・・ナカだけでイったこと、ある?」 ぼぅっとした頭で言われたことをしばらく考え、サンジは力なく首を横に振った。 ナカだけでイくどころか、痛みのあまり萎えたままゾロの劣情を受け止めるだけで終わる事だってあった。 「やっぱりなぁ。そうじゃないかと思った。損してるなぁ」 もっと奥へと誘い込もうとするサンジの後孔をぐるりとひと撫ですると、エースは指を抜いた。 「ひっ・・・や、だ・・・エース・・・」 もう一息というところで投げ出され、はしたなく強請ってしまいそうになるのを必死に堪える。 エースは自分の上からサンジを降ろしてうつ伏せに寝かせると、上からその背中にキスを与えながらゆっくりと跨った。 サンジの小さな尻へ自分の剛直を押し付けながら、問いかけた。

―――ねェ、ナカだけでイってみない?きっとイケる。大丈夫だよ?

甘い甘い、誘惑だった。

たとえ片想いでも、痛くても、ヨくなくても、多少の無理をしても、サンジはゾロと抱き合うのが好きだ。 身体は辛くても気持ちが満たされる。そんな充実感があった。 エースとだって、ゾロとのことで悩んでなければこんなことにはならなかっただろう。

しかし血気盛んな19歳。 好奇心でここまで来て今更止めるという選択肢を、サンジは持ち合わせていなかった。

「・・・ふ・・・ぅ・・・ぅ・・・あぁ・・・」 「そう・・・息をゆっくり吐いて・・・、大丈夫。怖くないよ・・・」 高々と腰を突き出し、獣の体勢でエースの剛直を受け入れる。 エースは決して焦らず、サンジの呼吸を読んでゆっくりと腰を進める。 「あ・・・っ、あ・・・!」 「・・・ぅ。・・・ん、ほら、入った」 ずっぷりとエースのものを飲み込み、サンジの孔がひくひくと震える。 は、はぁ・・・と苦しさを逃すかのように息を吐くサンジを、エースはじっと待った。 呼吸が落ち着き少し弛緩したサンジの腰をゆるりと触る。 「・・・っ!」 「・・・、っと、そんなに締めないで。痛くない?サンちゃん」 ベッドに突っ張った腕が今にも崩れ落ちそうになりながら、サンジは力なく頷いた。 「サンちゃんのナカはキモチイイなァ。おれのをきゅうきゅう締めてさ。もっともっと、って言ってるよ」 その言葉に反応するように、ひくん、とエースを締め付ける。 「・・・動くよ。サンちゃんのイイトコロ、見つけてあげる」 ずるり、とペニスが抜かれ、じわりじわりと律動が始まった。

「・・・ひゃ・・・あ・・・ぁぅ・・・あぁあああ!!」 何度も角度を変えて確かめながら動き、ある一点に触れたときに聞こえた今までとは明らかに違う声の上げ方に、エースは思わず笑みがこぼれた。 「・・・見つけた。さっき指で触ったところだよ」 お気に入りを見つけたかのように、そこばかりをペニスでぐりぐりと突き上げる。 「・・・ふ・・・うぁ・・・!!あ、エー・・・っ、ああ・・・んぁ・・・あ・・・っ!!!!」 前立腺をエースのペニスでじかに犯され、サンジはあられもない声をあげ続けた。 指とは比べ物にならない強烈な快感に、目の前がチカチカと煌めく。 もうイく・・・と思ったときに急にくるりと身体を反転され、上にエースの顔が見えた。 「・・・ぁ・・・っ」 かぁ、と赤くなる頬に、エースが軽いキスをする。 「きもちいい?」 何度も聞かれたこの問いに、サンジは素直に答えた。 「すげ・・・イィ・・・」 とろんと蕩けた瞳がエースを捉える。 だがその瞳はもっと何かを言いたげに潤んでいた。 「いいよ、言ってごらん?」 「・・・・っと」 「・・・ん?」 意地悪な瞳が問いかける。 「・・・も、っと・・・もっとシて・・・エースっ」 その途端にきゅぅうっと締め付けられ、たまらずエースは甘く喘いだ。 「・・・っ、そう、上手。もっと素直に欲しがって・・・」 ぐい、ぐい、っとそのポイントを一気に抉られ、サンジはひとたまりもなかった。 「あ!・・・!!あぁ・・・!い、・・・もっと・・・!もっと・・・!エース・・・エー・・・っ!・・・っぁ・・・あぁあああ――っ!!!」 ひときわ甲高い声が上がり、腰を突き出すようにのけぞりってサンジは一気に白濁を吹き上げた。

頭がスパークしたような、真っ白になったような。 そんな不思議な感覚からふわりふわりと戻り、サンジは目を開けた。 「・・・ほら、ナカでイケた。大丈夫?」 まるで疚しいことなど何もしていませんと言っているような顔で話しかけられ、サンジはこくんと頷いた。 「・・・す、げ・・・。頭、真っ白ンなった」 サンジの身体はくたりと力が抜けてほかほかと温まり、頬もピンク色に染まっていた。 「サンちゃんがリラックスするだけで、こんなに変わるんだよ」

――恥ずかしくないから、思ったことを口に出して言ってごらん。

耳元で囁かれ、サンジは再び素直に頷いた。 「おれァ、力みすぎだったのかな」 ぽつりと呟くサンジに、エースは微笑む。 「サンちゃんは真面目だからね。構えちゃうんだよ、きっと。でもせっかく好きなヒトとセックスすんなら、楽しまないと」 まるで両想いであるような前提で話を進めてくれるエースの優しさに、サンジはちょっと泣きそうになった。 そんなサンジの頭を撫でながら、「ところで」とエースが続ける。 「これ、ついでに鎮めちゃってもいいかな?」 まだ自分の中に入ったままのモノでつんつんと中を突き悪戯っぽく笑うエースに、サンジは思わず吹き出した。 「ここまで来ておあずけとか、同じ男として出来ねェよ」 「そ?じゃ、遠慮なく」 ニカっと笑ったエースを見て、サンジが笑みを浮かべることができたのはここまでだった。

次の瞬間、ずんと容赦なく突き上げられられ、今までの柔らかい動きが嘘のようにエースはサンジの中を思うさま蹂躙した。 「ぅ・・・あぁ・・・!な・・・!あぁ・・・!!!あ、あァ・・・!あつぃ・・・!!エー・・・ひっ・・・あぁ!!!!」 剛直の熱さとは違う、エースの能力特有の熱さがサンジの中を襲う。 「・・・んっ、・・・きつ・・・火傷しない程度に・・・抑えてるから・・・っァア・・・」 文字通り燃えるような熱さにサンジは身をよじって逃げようとしたが、しっかり抱きしめたエースがそれを許さない。 「や・・・、や・・・こわ・・・ぃ・・・エース・・・エース・・・!」 「ダメだよ・・・サンジ・・・逃げないで・・・っ」 激しい動きに、全身が痙攣するかのように揺すぶられる。 「あ・・・エース・・・エー・・・っ!!・・・っ!!あァアアア!!」 「も・・・イく・・・サン、ジ・・・っ!」 中の熱さと、さっきまでとは違うエースの切羽詰った切ない囁きに、サンジは完全に意識を飛ばした。 再び劣情を吹きあげ薄れていく意識の中で、薄い被膜越しにもエースの熱が放たれたのを感じ、何だか満ち足りた気分になりながらサンジは眠りへと堕ちていった。

まだ夜も明けていない街の中を、エースは一人歩いていた。 サンジには「ここであったことは内緒ね、ほら、おれお忍びだし」と茶目っ気たっぷりに念押しし、「素直になりなよ」と額に軽くキスを落として別れてきた。

可愛かったなァ。 昨晩の痴態を思い出し、出来ることならばこのまま連れて帰ってしまいたい衝動に駆られたが、彼にだって夢や仲間がある。 同じ海賊稼業をしているのだから、そんな融通がきかないのは百も承知だった。

サンジにとって自分と同い年のゾロに全てをさらけ出すのは、おそらく身体を差し出すよりも勇気が要ることなのだろう。 大人ばかりの環境で育ってきたサンジは、ひとつとは言え「年上の」自分の方が素直に甘えられるのかもしれない。

――――それにしても。

サンジの想い人は、サンジが思っているような気持ちで船を追い出したわけではないような気がするのは自分の考え違いだろうか。 エースには伝聞でもゾロの言葉の端々からサンジに対する優しさが垣間見えるのだが、当の本人は気がついていない。 世界最強だけを目指し、ひたすら前を向いている未来の大剣豪。 そのまるで人を寄せ付けないかのような姿は、ルフィが目の前に現れるまでの自分と重なるような気がした。

ま。お互いもう少しかかるかもな。

本当はゾロにもレクチャーしてあげたほうがいいのかもしれないけどなァ。 しかしいくらエースでも、馬に蹴られて殺されるのはゴメンだ。

長い旅になる。焦らずゆっくり進めばいい。 かわいい弟のかわいい仲間に幸あれと、エースは想い人が眠る宿へと軽やかに歩いて行った。

(おわり)

-------------------------- 勢いで書いてしまった初A3です。後悔はしていない。 エースはレクチャーだの浮気じゃないだのと、耳障りのいい言葉でうまくサンジを丸め込んで食べちゃいましたが、丘咲的には完全にアウトだと思います← その後のゾサはこちら。

(2013.3.7 pixiv/2013.5.9改稿)

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