「よぉ。ジャマしてるぜ」
無人のはずの自分の執務室へ入ると、すらりとした金髪頭の男がソファーで寛いでいた。
「…貴様、どうやって入った」
「正義」のコートをはためかせた男は不機嫌を隠さずに忌々しげに吐き捨て、ドアを閉めた。
「ここのセキュリティはチョロいなァ。てめェも一応中将殿なんだから、もうちょっと護衛でもつけてもらったらどうだ」
質問には答えず、にやんと人を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「質問に答えろ。目的は何だ」
「あァ?暇つぶし」
さらっと答えると、手にしていた細身の葉巻をくわえ、ふーっと吐き出す。
「誰かさんの部下のおかげで船が傷んじまって、今うちの船大工が修理中なんだよ。で、ジャマだし出かけようと思ったらちょうど船があったんでな。おジャマしたってワケだ」
スモーカーの部下が警戒警備中に麦わらの一味と遭遇し、上司であるスモーカーの判断を仰がずに攻撃を仕掛けたのはつい昨晩のことだ。
しかし行動の予測が出来ない一味に見事に翻弄され、報告を受けて本部から戻ってきたときはすでに遅し、分隊がほぼ壊滅状態にされていた。
総額7億超えの一味だ。迂闊に手を出すなと言っていたのに、訓練を終えた配属されたばかりの新兵が先走った結果だ。
処分を下そうにも処罰を受けるべき人間がいないという事実に、スモーカーはやりきれない感情を押し殺していた。
その報告を終えて部屋に入ると、張本人の一味が我が物顔で座っている。
イライラするなというほうが無理な話だ。
「怖い顔してんなァ。別に何もしやしねェよ。中将殿がどんなところにいるのかが見てみたかっただけだ」
金髪の男、黒足のサンジは恐らく一味の諜報員も兼ねているだろう。
これまで何度も敵の足元をすくうような動きをしている。
事後処理でゴタゴタしている今でなくても、この男なら容易に潜入したであろう。
それに、とサンジは続けた。
「てめェの可愛い黒髪だって、しょっちゅう来てんだろ?」
無意識にぐっと眉間に皴が寄る。
「七武海と海軍中将の逢瀬の場としちゃ、まァお誂え向きな部屋だな」
そんなスモーカーを気にする風でもなく、サンジは再び葉巻を燻らせた。
細身でしなやかな体躯にハニーブロンドの髪。
しかしその物腰とは正反対の強烈な蹴りで、幾多もの敵を蹴散らしている。
頂上決戦後、2年の時を経たその姿は、さらに輝きを増しているようでもある。
「…あぁ、1本失敬したぜ。たまには葉巻もいいな」
でもやっぱキツい、と灰皿に押し付ける。
灰皿に置かれた残骸に、スモーカーは再び眉をひそめた。
「貴様…どこからそれを抜いた?」
スモーカーが愛用しているそれとは違う、細めの葉巻。
これは―――
「引き出しに入ってたぜ。細いのがあったから貰った。てめェが吸ってるサイズはさすがにキツすぎる」
葉巻1本でガタガタ言うなよ、と笑う頬が少し赤く見えるのは気のせいか。
「しっかしてめェ、すごい趣味してんな。この葉巻。どピンクの箱なんてどこで見つけたんだよ」
ギ、とソファーが軋み、金髪が立ち上がる。
「ま、中将殿の顔も見れたことだし、そろそろ帰るか。メシの支度もあるしなァ」
両手をポケットに入れ歩きだし、すれ違おうとしたサンジの肩をぐっと掴む。
「…っ」
びりり、と肩が震えたのは、気のせいか。
スモーカーが忌々しげに口を開いた。
「貴様が吸った葉巻は、ドフラミンゴが寄越したやつだ。イイ気分になれるとかほざいていたから怪しくて吸えたもんじゃねェ」
「…んだ、と。あのピンク野郎がか?」
―――ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
一度でも実物を見たことがある人間であれば、彼がノーマルな人間ではないことは誰でも分かるほどの個性の持ち主だ。
そのドフラミンゴからの『プレゼント』なんて、怪しくて開ける気にもならない。
そしてそれを知らずに吸ってしてしまった自分は…?
実はさっきから頬が熱い。
スモーカーが部屋に入ってきて、温度が上がったせいだと思っていたのだが。
掴まれた肩がぴりぴりと何かを呼び覚ます。
ぞくぞくと背筋を走る悪寒に、ぶるっと身体が震える。
「…く、っそ」
スモーカーの手を薙ぎ払い、じわじわと広がる熱をこれ以上広げないように、掴まれていた右肩を自分の左手で押さえる。
荒くなる息が熱い。
スモーカーはそんなサンジに背を向けて机へ向かい、電伝虫を手に取った。
「スモーカーだ。仮眠を取る。しばらく誰も取り次ぐな」
ガチャン、と切る音が大きく聞こえる。
ゆっくりと自分のほうへ歩を進める音に、サンジは唇を噛み締めた。
ちくしょう、しくった。
熱い熱はじわじわと身体を蝕み、もう立っているのさえやっとの状況だ。
「催淫作用のある葉巻、か。ある意味予想を裏切らねェ『プレゼント』だ」
後頭部にかけられた手に髪の毛をぐいっと引っ張られ、強制的に上を向かされた。
「手負いの貴様を捕らえたところで何の価値もない。これに懲りたら、くだらないお遊びはやめることだな」
その低い声に蕩けそうになる理性を奮い立たせ、睨みつける。
「…はっ、それが出来たら海賊なんてやってねェな」
「…いい度胸だ」
すぅ、と目を細め、スモーカーは金髪を掴んだまま顔を寄せる。
「俺は据え膳は遠慮なく喰らうタイプだ。そこまで腹を括るなら、貴様も割り切って楽しめ」
細い顎を掴み、スモーカーは唇を深く合わせた。
「…んぅ…ふ…っ…ぅ」
スモーカーの厚い舌は容赦なくサンジの口腔を蹂躙し、じゅるりと吸い上げる。
剣豪と交わすそれとは違う、葉巻の香りが混じった濃厚なキスにぞくぞくと愉悦が走り、頭の芯に霞がかかり膝の力が抜ける。
耐え切れずがくん、と膝が折れたところでサンジはスモーカーの肩に抱え上げられ、ソファーへ乱暴に投げられた。
その衝撃すら甘美で、サンジは身じろいだ。
仮にこのまま警備をかいくぐって船に戻れたとしても、聡いゾロは異変に気付くだろう。
無関心なようで、実は嫉妬深い剣豪の反応を考えるとゾッとしない。
それに…この中将の手管に興味がないと言えば嘘になる。
そう思うのは、この如何わしい葉巻のせいだろうか。
どうこう考えても仕方がない。
サンジは腹を括った。
「…確かに、…っ、これじゃぁまともに船に戻れそうにねェ。…しょうがねぇな。楽しませろよクソ中将」
ゆっくりとした動作でのしかかってきたスモーカーを、サンジは人差し指を内側にちょいちょいと折り曲げ挑発した。
もっと抵抗するのかと思ったが、黒足は一度割り切れば快楽に素直になるタイプだった。
以前会ったときは常に自分の身を挺して仲間を守り、自分の心の内も隠し否定している印象だったが、今は自分に自信を持っているのが見て取れる。
決して投げやりではなく、状況次第によっては剣豪以外の人間と肌を合わせるのもやむなしと考えるこの心の余裕。
姿を消していた2年の間に、この男は何を得たのか。
口腔を舌で犯しながらシャツを胸までたくし上げ、火照った肌をひやりとした空気に晒す。
その動きを真似るかのように手を腹からゆっくりと這い登らせ、ピンクベージュの突起を捉えた指先がゆっくりと円を描く。
「ぁあ…っ!…ぅぁっ!」
ぷつりと主張するそれを戻すように押し込んだり、かと思えば摘んで引っ張り出したりされ、サンジは耐え切れず声を上げた。
ちゅぅ、と吸い上げるとそれはぴくんと反応し、ねだるように成長する。
もどかしい刺激にサンジの腰が跳ね、スモーカーの太ももに股間を擦りつけた。
ずるり、と下半身がむき出しにされ、固く勃ちあがったものを遠慮なしに掴まれる。
「…っ!!!」
普段であれば痛いだけであろうその乱暴さも、あの禍々しい葉巻の影響なのか、甘く溶けるような快感に変わる。
輪の形に捉えられ、数回上下されるだけでもうたまらなかった。
「ひ…っ!…あ…ぁ…はぁ…っ!…ィ…ッ!!!」
白い身体がのけぞり、どぷんと白濁した液体が噴き出し、とろとろと陰茎を汚す。
とどまることをしらないかのように出続ける液体に、サンジの理性は崩壊していく。
「…いい身体だ。元海賊狩りも夢中だろうな」
それまで一言も喋らなかったスモーカーの突然のつぶやきにサンジは我に返り、力のない目で睨み付ける。
「は、…っ、お褒めにあずかり光栄だな」
「…前だけじゃ、物足りない顔だな」
そういうとスモーカーはサンジの足を左右に大きく開き、とろりと濡れた蕾に触れた。
「…っ!!」
強気な光を放ちながらもどこか怯えたような瞳に、蕾を優しく撫でながらスモーカーは囁いた
「安心しろ。入れやしねェ。あのロロノア・ゾロに自分から首を差し出すほど俺もバカじゃない」
あふれ出た液体を人差し指で掬って蕾に埋め込み、中をかき回す。
「ふ…っ!ぅ…ん…あ…っ、ァ…」
途端に瞳の色は安堵と欲望に染まり、もっと飲み込もうとひくひくと蠢く。
少しかさついた節くれだった太い指が、ゆっくりを中を犯す。
ねっとりとした甘い刺激に、サンジの頭の中は真っ白になる。
指を2本、3本と埋め込み、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立ててやると、それに答えるようにサンジも甘い声をあげて腰をくねらし、自分のいいところにあてようと埋め込んだ指に中をこすりつけてくる。
「ふ…ぅ、あぁ…も…イ、く…んぅ…っ」
2度目の絶頂を迎えようとしていたそのとき、スモーカーは全ての指を抜いて立ち上がった。
「…ぃっ!…ぁ、…な、んで…」
蕩けきった瞳がスモーカーを映し出す。
「入れねェとは言ったが、何もさせねェとも言ってねェ」
その気がなくても身体は素直に欲情する。
男とはそういう生き物だ。
前を寛げて出した十分に起立した分身を、サンジの頬に突きつける。
一瞬の躊躇いのあと、サンジはゆっくりと砲身を口に含んだ。
「ん…ぐ…ぅ…っ…!…ん…ゥ…」
じゅぶ、じゅぶ、と淫猥な音を立てながらゆるゆると頭を動かし、砲身全体を口で愛撫する。
片手は嚢をやわやわとも揉みしだき、もう片手は含みきれない部分を撫でさする。
時々裏の筋にも指は伸び、その刺激に分身は質量を増す。
金髪が股間で動く様を見て、スモーカーは不思議な気分だった。
ブロンディってのも、悪くはないが。
…やはり自分は、あの生意気な黒髪がいい。
「…っ…ぐ・・・っ!」
異変に気付き反射的に離れようとする頭をぐっと押し付け、スモーカーはサンジの口腔に吐精した。
離してもらえないと悟ったのかサンジは抵抗をやめ、喉の奥で搾るようにスモーカーを締め付け、出されたものを素直に飲み込んだ。
じゅっ、と先に溜まった雫までを舐め取ったところで、ようやく開放される。
「躾が行き届いてるな」
からかうように言うと、荒い息を吐きながら生意気そうな瞳がこちらを見た。
「は…、ねちっこいクソオヤジが。外科医も大変だな」
憎まれ口を叩き、乱れた金髪をかきあげると、ソファに腰を下ろした。
「…途中で放り投げんじゃねェよ」
自慢の足を座面に乗せ、ゆっくりと開くサンジの間に、スモーカーは身体を滑り込ませた。
「…あ、…あァ…っ!…ふっ、ん…ァアア!!」
後孔には再び3本の指が埋め込まれ焦らすような動きに、サンジはあられもない声を抑えようとしない。
「3本でも足りない…か」
「…じ、らしてんじゃ…ねェよ…っ!このエロ中将…っ!ぅあ…!!」
普段剣豪に可愛がられているであろうそこはしっとりと吸い付き、しかし指ではないモノを欲しがってひくついていた。
ここまできたら最後まで進めても同じような気はするが…黒髪の暗い光を灯した瞳が脳裏を掠め、スモーカーの頬が傍目には分からない程度に緩む。
あの嫉妬深い恋人は、何も感じてないふりをしながらも多分荒れるだろう。
新たな火種を作る必要はない。
ぐいぃと両手の指でサンジの後孔を開き、ピンク色の襞が丸見えになったところに口を付け、容赦なく吸い上げる。
「ひ…ィい…っ!!あ、あ…く…そ…っ!すげ…っっ!!」
じゅるじゅると派手な音を立ててすべてを持っていかれるような感覚にサンジの腰は崩れ落ち、ソファーからずり落ちそうになるのを必死に堪えていた。
「足りない分は、戻って剣豪に可愛がってもらえ」
そう言うと左右2本ずつの指をやや強引に突きたて、4本の指で前立腺を容赦なくこすり上げた。
とろとろと蜜を溢す陰茎をすっぽりと含み、鈴口を舌で絡め取ると声に一層の艶が含まれ、嚢がきゅぅと吊り上がって絶頂が近いことを知らせる。
「…っ、そ、こ…っ、いい…っ…ク!…・イくっ…っ!!ァアアっ!―――――――っ!!」
声にならない声がサンジの口から吐き出され、きゅ、と後孔が指を締め付ける。
それとほぼ同時にふるりと陰茎が痙攣し、ごぷ、と青臭い味がスモーカーの口腔に広がった。
何度となく放出されるそれを最後の最後まで搾り取るように吸い上げてから身体を起こし、絶頂の余韻に浸り弛緩してるサンジの頭を持ち上げ、含んだ液体を口付けで注ぎ込む。
「…っ!!!…むっ…うぐ…」
出されたものをそのまま飲み込むのとは違う、口の中いっぱいに塗りつけられるように舐めねぶられ、サンジはその味に反射的に吐き出そうとした。
しかし、
「貴様が出したモンだ。飲み込め。溢すなよ」
ぐっと頬を掴まれ耳元で低い声が囁き、液体はそのままごくりとサンジの喉を潤した。
「やれやれ。海軍中将様は変態プレイがお好みか。外科医も身体がもたねェな」
きっちりと服を整え、次こそは自分のタバコに火をつけたサンジを、スモーカーはギロリと睨みつけた。
「落ち着いたんならさっさと出て行け。貴様の戯言に付き合う暇はない」
「ま、経験値を稼ぐ分には悪くなかったけどな」
にやんと笑って、サンジはドアへ向かった。
ドアノブに手を掛けて、「そうそう」と振り向く。
「アレ、たった2回出したぐれェで素面に戻るなんて子どものおもちゃのようなモンだけど、悪かなかったぜ。あと7本あるから、まぁマンネリだったら使ってみろよ」
ぶわっと吹き上がった煙が触れる刹那に、サンジは開けたドアからひらりとその身をすり抜けて姿を消した。
(おわり)
-------------------------- SSを書き始めた頃に、カンザキさんに「スモロを書け!モクメラでもいい!何でもいいからスモやんを書け!」と脅され言われて書いたのが何故かス モ サ ン 思いついちゃったもんは仕方ないです。 これが雑食の始まりでした。 タイトルはカンザキさんにつけてもらいました。 私も書くから~と言って、自分は素敵な中将と可愛いコックさんにバックれ仕上げたことは一生忘れません(;つД`)
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