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執筆者の写真丘咲りうら

モクとメラ (スモーカー×エース)

 「…貴様は何度同じことを言わせれば気が済むんだ。ポートガス」

 バスローブ姿で横になっていた男は不機嫌さをあらわにして、背後に突然現れた気配に振り返りもせず言い放った。  「いやァ、起こしたら悪いかなと思って」  炎から生身の身体に戻りながらエースはへらりと笑った。  「あ。ちょっと焦げちまった。葉巻落としたってことにしといてな、スモーカー」  床に残った小さな焦げを確認しながらも全く悪びれないエースに、スモーカーは不快感を隠すことなく起き上がり、2本の葉巻を口に銜えて火を点けた。

 先ほどまで夜を徹して要人の警備についていたスモーカーは、ようやく安宿で自分の仮眠時間が取れたところだ。  仮眠といってもわずかな時間で、昼前には本部に戻らなければならない。  その貴重な睡眠時間を削り取ろうとする男に、スモーカーは苛立ちを隠そうとしなかった。  それ以前に、この男はこちらの都合などまるでお構いなしにどこからともなく現われ、毎回その能力を使って部屋に忍び込んでは焼け焦げを作る。  侵入されるたびにやめろとはっきり言っているのだが、改善する気はないらしい。

 「何の用だ。手短に済ませろ」  歓迎などしてないという素振りで睨み付けるスモーカーの懐に、エースは怯むことなくするりと身体を滑り込ませた。  ぎゅうと背中に回された腕。  うなじから立ち上るその雰囲気とわずかに残る香りに、スモーカーは眉の皴を深めた。  「…また、遊んでたのか」  「ん~…今日のは遊びじゃないなァ。レッスン?」  的を外した答えに、スモーカーはさらに苛立ちを覚えた。  出て行け、と口から出る直前に、エースが呟いた。  「可愛かったなぁ。サンちゃん」  どこかうっとりしたような声音に、スモーカーの眉が再びぴくりと動いた。  「…黒足か?」  「…そ。俺と一緒で切ない片想いで悩んでたから、同志としてちょっとレクチャーをね。そしたらさァ、エース、エース、って何度も呼んで縋り付いてきてさぁ。かァわいいの何のって。マジで連れて帰ろうかと思ったぜ」  ゾロの代わりじゃないんだぜと何故か得意げに語るエースに、心底呆れたようにスモーカーは言った。  「貴様…そんなことばかりしてたら、そのうち誰かに刺されるぞ」  割と本気のアドバイスだったが、当のエースは気にした様子を見せない。  「大丈夫だって。ちゃんと割り切った関係ばっかりだし、それに――」  スモーカーの太い首筋に腕を回し、ゆっくりと見上げる。  「おれのナカに入れさせるのはアンタだけだよ。スモーカー」  どこか甘えたような仕草を見せるエースに、スモーカーは冷たく言い放った。  「…疲れている。手短にしろ」  エースは、待ってましたとばかりにニカリと笑みを浮かべ、喜々としてスモーカーを組み敷いた。

 自由奔放な性格故か、海賊とはそういうものなのか、エースは時々こうやって男女問わず誰かを抱いては遊んでいる。  それだけなら自分には関係のないことだが、その後は必ずといっていいほどスモーカーの前に姿を現し、抱けとねだるのだ。  初めのうちは何が楽しくて海賊と、と思ったが、据え膳は残さず食うのを信条としているスモーカーには、本音と建前は別次元の問題であった。

 「…んぅ…ふ…。も、いっかなァ…」  スモーカーの怒張を口に含みながら己の秘孔を解すエースの姿は扇情的であったが、スモーカーは敢えて顔に出さずにいた。  「んだよ、疲れてるって言ってたクセにこんなになって。あ、もしかして疲れマラ?」  その場に似つかわしくない屈託ない笑顔でケラケラと笑いながら跨ろうとするエースに、スモーカーはストップをかけた。  「おい、ちゃんと使え」  その一言で全てが通じ、エースはつまらなさそうな顔をする。  「やっぱり?いいじゃんかよ。別に付けなくたってさァ」  ぶつぶつ言いながらもエースは避妊具を取り出し、口で封を切って手早くスモーカーの怒張を包みながら囁いた。  「死ぬまでに1回ぐらいはさァ、ナマのアンタが欲しいよ」  エースはスモーカーの張り詰めた雄を後ろ手に握りこみ、ずぶずぶと自分の中へと迎え入れた。  「…ふ…ぅ!ん…あ…っ、は…!!…ァ」  顎を反らせて一気に腰を沈めると、満足そうに息を吐いてぶるりと震えた。  「んぁァ…。やっぱコッチを知っちゃったら、前だけだと物足りねェんだよ」  うっすら笑って、ぐりぐりとポイントを探すようにうごめく。  お気に入りの場所を見つけたようで、エースはゆっくりと腰を前後に動かした。  「…ァ!…あぁあ…っ、ん…、ぁ…ああ…っ」  目の前で続く若い男の痴態に、スモーカーの雄も素直に反応し質量を増した。  「…動くぞ」  軽く断りを入れ、律動を開始する。  エースの前後の動きとスモーカーの上下の動きが交差し、互いに眩暈がするような快楽の波に引きずり込まれる。  相殺する能力者同士だからこそ、セックスにおいても存分にのめりこむことが出来る相手。  特にエースのその能力は常に自制をしていないと、相手を内側から燃やしかねない。  その気遣いをしなくてもいいスモーカーとのセックスは、いつも我を忘れさせた。  エースの眼は快楽に蕩け、開いた口からはちろちろと舌が見え隠れしている。  「ぁ…っ、キた…っ!!あ、アァ…っ!イィ…!イっ…!あ…!!…っぁあああ――――っ!!!」  限界まで身体をのけぞらせ射精を伴なわない快感に酔いしれるエースの腰を支えながら、スモーカーはその収縮に耐えた。  エースの瞳が焦点を定めるまで、スモーカーは動きたい衝動を抑えじっと待った。  「――気が済んだか、ポートガス」  「…ァ…だからエースって呼べよ。…こんなときぐらいはさァ」  情欲を色濃く残した声音でエースが甘く反論する。  何がだ、とスモーカーは内心で毒づいた。

 おれの片想いだのアンタだけだのと言い寄るわりには、エースはその行為中に絶対にスモーカーの名前を口にしない。  快楽は隠さないが、本心は何かに怯えるかのように隠し通す。

 ―――そのていで何がレッスンだ。

 そう言ってやりたいのはやまやまだったが、こちらの身体も限界に近い。  それに―――

 「ホントはさァ、コッチを教えてあげたかったんだけど、サンちゃんまだ経験浅いからさ。まぁ、追々2人で開発すればいいよなァ」

 スモーカーは低く唸り、今度こそ容赦なくエースを突き上げた。  「…ぅあ!!…んだ、…あ…!あぁ…っ!!ちょ、待っ…!!」  「最中に、他のヤツとの話をするとはいい度胸だ」  自分が控えた話題をあっさりと口にしたエースに、スモーカーは再び苛立ちを覚えた。  横倒しにして組み敷き片足を高く持ち上げ、焦らすことなく性感帯を攻めたて快楽の坩堝に突き落とす。  一度深い快感に捕らわれていたエースの身体は、あっという間に次の快楽に目掛けて突き進んだ。  「ァアア…っ、…!!ひっ…たまん…ねェ…っ!!…あァ!…アァアアアッ!!」  「次、同じことをしてみろ。どうなるか責任は持てんぞ」  それが「どのこと」を意味しているのかを理解できないまま、エースは再び絶頂の淵から身を投げた。

 ―――完徹決定だ。  自分の懐で母親の胎内で身体を丸めて眠る子どものような姿勢でぴったりと寄り添い穏やかな寝息を立てている男は、普段の表情からは想像できないほど無防備で幼い。  唯一自分の前でだけ見せるその姿を見ながら、スモーカーは静かに葉巻を燻らせた。

 追わなければ追いかけ、追いかければひらりと翻して背中を向ける天邪鬼なこの男の心中は、いつも炎の中で揺らめいている。  決して人に見せないと、どこか覚悟をしているような印象すら受ける。  それを暴きたいと思うのは、この男を抱くオスとしての本能なのかそれとも――――

 自分が思っている以上にこの黒髪の海賊に入れあげているという事実を、否定することが出来ないスモーカーだった。

(おわり)

-------------------------- 「レッスン代は~」を書くと決めたときに、「エーサンを書こうと思うの(´∀`*)」と言うと「その後のモクメラを書くなら許す」とよく分からない許可が降りました。(誰に言われたかはご想像にお任せします) なのでエーサンを上げた後に仰せのままに書いたのがこのSSです。 大変だったんだぜ・・・スモ誕に合わせるの・・・。 スモさんは黒髪の海賊がお好きなようです。

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